枡田省治「ゲームデザイン脳」

 30代後半にはエロゲマのあれこれのクリエイター神話より枡田神話のほうが訴求力があるんじゃないかと思うんだけど、そうでもないのかな。メジャーとマイナーの中間どころの微妙な位置づけなんで逆にマニアックになっちゃうのか。もうちっと判りやすくオタクに振られるか、メジャー志向な感動路線を貫いてくれたほうが受けはいいかもしらんが、本書の中でわざわざエンディングをアッサリ味にしてあまり盛り上げない心がけについて説明してたりするので、やっぱ職人的な位置づけなのかも。

 ギャルゲー的にはなんつってもネクストキングの人である。井上喜久子に「おにいちゃん」と呼んでもらうことのできるマニアックゲーはどのようにして出来たかが開陳される。とりあえず声優とギャルゲーの歴史的相関に興味がある人は、本書で語られるその衝撃的な真実を一読しておくことをお勧めする。

 さて、普通に刺激的な啓発本の形は整えてあって損しないと思う。業界でも名の通った筆者が「リンダキューブはレンタルアダルトビデオの強姦ものコーナーを見て、強姦ものを一般向けゲームに取り入れたいという発想から出来た」と書きつつ「テレビゲームの快楽なんざパチスロと同じで光や音で間断なく刺激しつづけ、適当な頻度で当たりを出すだけ。麻薬と同等の安直な快楽発生装置になりうる」と述べるのだから、実にいい。ゲームを論じるならこんぐらいの認識は最低限持ってなきゃダメだ。

 最近だとバクマン貞操観念ガチガチな女性漫画家にパンチラ漫画を描かせるべく「同じ恋愛漫画でも少女誌ならもっと先まで描写しないといけないでしょう? ジャンプなら毎週パンチラ書くだけでいいんです」と口説くセクハラ編集者の台詞をアニメ化でそのままやるのかなと今から期待していたりするのだが、本書はそれと同じぐらい青少年の健全育成を議論するにあたって参考にして欲しい物件。

 ところで、おいらは小学生時代にブライガーを全話見て例の青カンのシーンも目にしているはずだが(DVDも買ってチェックした)、エロいシーンを見た記憶は全くない。一方で大河ドラマ山河燃ゆ」のレイプシーンや「春の波濤」の伊藤博文によるヒロイン買春は(描写も時間をたっぷりかけたコテコテな内容だったし)よく覚えている。アニメのセックスシーンなんぞ、まあその程度のインパクトだという話。ものを知っちゃいないガキがちょっと見かけるぐらいで特殊事例なセックスをいきなり理解できるわけもない。