DUNE 砂の惑星(映画)

2021年の映画。

2001年の映画の指輪物語、というか映画の呼ばれ方としては「ロードオブザリング」を狙ったんだろうなあと思って見に行って、だいたいロードオブザリングだなあと思って、パンフ見て監督がロードオブザリングって言ってて、そんな感じ。全景な風景メインな絵ばっかなのもそうだし、主人公が夢というか未来幻視に振り回される感じは指輪の力を使ってるフロドっぽいし、彫りの深い顔つきの主人公もフロドっぽいし、ダンカンもなんかボロミアっぽいし。つうか原作のデューンにしたって指輪物語のフォロワーの側面があるだろうから、そういうふうに描こうと思ったら描けちゃうよなーというあたりか。

そんで、まあこんな感じだろう良かったじゃんと思ってたのだが、世間的にはめっちゃ反応が薄くて爆死の可能性すらありそうで、えっそうなのってなった。

基本的にこれファンタジー枠だと思ってるんで、日本のSF系の人たちが反応薄いだろうっていうのはある程度は予想してたのだが、ファンタジーだと思わずSFだと一般客に思われてめんどくさいと回避されちゃったんだろうなあと。もったいない。

 

お話について。

話としては予定調和的に、というか神話的にことは進み、起こることは起こるべくして起きて、そこにドラマティックな要素はない。人間の感情みたいのがむき出しじゃないのは個人的には好感度高い。ハルコンネン家がどう邪悪なのか人間ドラマ的にわかりづらいと言われたらわかりづらいんだけど、そんなこと言ったらロードオブザリングのオークの軍勢がどう邪悪なのかなんてよくわかんないし、ハルコンネン軍団はオークみたいなもんだよとしか言いようがない。ハゲだし。サーダカー軍団は黒の乗り手みたいなもん。母親はガンダルフよろしく主人公ポウルを運命に投げ込むし、ポウルはフロドよろしく言われるままに運命に飛び込む。

 

絵について。

戦闘シーンなんかだいたい抽象的で最初から「リアルな戦闘」とかやる気がない。火砲爆撃は紅魔族による巨大攻撃魔法の一撃みたいなイメージ。めっちゃ美しい。

で。それゆえに、メカニカルなギミックのどれもが「中世ファンタジーの装い」になりおおせてるのが凄い素敵。今回見るべきはそこです。中世ヨーロッパ時代のメカニックなのか、メカニカルな意匠をこらした中世なのか渾然一体のひたすら重厚な城塞設備に宇宙船に兵器に巨大機械装置の数々。オーニソプターは意識的にトンボ形状にしてるんだろうけど気持ち的にはメカニカルな装いを得たドラゴンライダー。「SF映画として目新しいものがない」とかそんな後ろ向きな話じゃなく、「正統派ファンタジー映画の中に鉄の巨大機械兵器がしっかりと落とし込まれ取り込まれてる映像がたっぷり見れる」という話です。どうせ日本のガチ系SFファンはデューンあんまし相手にしてないんだし、そっち向いたってしょうがないしね。

あと砂虫は普通に描写良かった。いや造形としては昔から全然変わってないんだけど、変に陰茎ぽくするのと全く逆に、虚そのものな穴でいかにも神話的だった。

 

全体に。

絶賛すべきかと言われると、知らんわ、俺はファンタジー大好きマンとしてファンタジー絵を愛でるわ、となります。

一方で、西洋人が誉めてるのについては、なんつうか含むものがあるので、あんまし乗れない。1960年代の新造の神話譚だから、今これを作ったらどうしたってイデオロギーにまみれるし。ロードオブザリングにしたところでデジタル時代の神話として位置づけられるべくそこに置かれた感あるしね。神話をフィクションとして消費したい日本人的には神話を神話にしたい西洋人の思惑が嫌といったところ。