のこみ「悪役令嬢レベル99」ビーズログコミックス

わりと早くアニメ化され、そこそこ反応あった本作。

アニメ終了後も黙々とコミカライズは継続しており、ギャグ基調を強めに押し出してたアニメとはテイストの異なる方向で展開中。

元々アニメはあまり金かけない作りにする都合もありデフォルメやコメディ色強めを打ち出してたので、そこら辺を気にする必要ないコミックだと少し重めで真面目な空気に軌道修正が可能。最新6巻はクライマックスに向けてかなり真面目よりに盛り上げて来ている。

てなわけで最終決戦直前、かなり良い雰囲気でカップル成就、祝福を。

  

youtu.be

 

https://comic-walker.com/detail/KC_003695_S/episodes/KC_0036950000100011_E

木村琴々「悪役令嬢なのに、婚約破棄されて溺愛ハッピーエンド! 異世界恋愛ショートストーリーズ」角川コミックスエース

原作者一名、コミカライズ一名のコンビの短編集。初出はコンプティーク毎月掲載で、角川のWebサイト上のタイトルは「異世界恋愛ショートストーリーズ」のみ、雑誌連載開始が記事として宣伝もされておりこちらでも「異世界恋愛ショートストーリーズ」で紹介されているので「悪役令嬢なのに〜」は純然と検索ひっかけ、売るための看板。実際、収録短編のうち悪役令嬢枠に収まりそうなのは5作中2作で半分以下。

各話ともにシナリオも絵もクオリティが高く、編集サイドか原作者か漫画家か、誰が主導なのかは不明だがそれなりにやる気のある企画と内容だったのが察せられる。

コミックレーベルがエース名義なのは掲載がコンプティークで編集サイドがweb記事まで打って仕掛けてることを考えれば当然だが絵柄的にも表紙的にもフロースコミックに分類されそう。フロースコミックだとアピール先が女性限定になってしまうデメリットがあり、エースだと女性向けらしさに対し男性読者が拒絶反応を示して足を引っ張りそうでもあり、内容がしっかりしていて男女の別なく読めるだけに売り方が悩ましいなと感じる。タイトルに悪役令嬢と付けるのは悪役令嬢なら男でも買ってくれるという算段だろう(実際、それで買いました)。

 

manga.nicovideo.jp

 

岡保佐優「ヒロインが来る前に妊娠しました 4巻」モンスターコミックスf

前の感想はこっち。

 

前回感想時のヒロインは2巻で無事出産結婚、ライバルも普通に改心して波乱なくハッピーエンドで終わっており、3〜4巻はヒロインが代替わり。世界観的には1〜2巻のヒロインが乙女ゲーム1作目、3〜4巻は乙女ゲーム続編。

ゲームの舞台は同じ世界の同じ学園なため1作目ヒロインが道を切り開いてくれており、学生の妊娠に対して学園が対応する準備ができている。つまり貴族社会的にというか学園的にというか、貴族が通う学園世界の婚前交渉妊娠出産オッケーの伝統が作られつつある。4巻最後のエピローグでは乙女ゲーム続編の次の話、三人目のヒロインが予告されており、こちらも最初のヒロインの実績に頼って婚前交渉妊娠出産の困難を強行突破する気満々。

前作感想時に解説したように、乙女ゲーム世界の悪役令嬢に転生という体裁を装っているが、現実世界の記憶を取り戻す前からやることやって妊娠して相手側も結婚する気満々のカップルの話で、悪役令嬢テンプレイベントすら発生せず、乙女ゲーム原作側のヒロインも全く色恋に絡まない。やってることとしては「未婚で学生出産でも周囲の理解万全で皆から愛されまくり」に尽きる。ちなみに乙女ゲーム上ヒロインとなるはずの女性は初代こそその気はあったがすぐ諦めて恋愛に絡まず、二代目乙女ゲームヒロインもまた本当に恋愛沙汰には全く絡まない。というか、酷い話だが、ゲームイベントが強制発生するタイミングになると本人の意思と無関係にその場の空気や会話の流れとも関係なく唐突にゲーム台詞を喋り出し、その間、本人の意識は曖昧で記憶もなくなってるという、若干ホラーな描写。

 

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こんなの絶対なんかの伏線だろと思うだろうが何も起きず、というか念のため先回りして注意して対応した結果、何も起きずめでたしめでたし、となる。それだけ。もう乙女ゲームである意味あるの? と思うだろう。

ではなぜ乙女ゲーム原作で悪役令嬢転生なのかというと、これはもう、「悪役令嬢はヒーローだから」以外の何者でもない。

同じく妊娠するだけ漫画であるところの「うっかり陛下の子を妊娠してしまいました」と対比すると、悪役令嬢転生という枠があるだけで、随分と救済されていることに気づく。

女の子、学生で結婚もしてないのに妊娠しちゃって怖いよね大変だよね、でも大丈夫、あなたは悪役令嬢だから。悪役令嬢はヒーローだから怖いものなんて何もないの。別にオーホホホと笑わなくても縦ロールじゃなくても、あなたは悪役令嬢、幸せな未来が待っているよ。

 

ということで、5巻以降も悪役令嬢エンパワーメントで安心して出産だ、頑張れ女の子。

  

 

gaugau.futabanet.jp

 

バットマン vs ミュータント・タートルズ

そういや言及されてるのあんま見かけないなと思ったので、唐突に。

 

アメコミ方面はしばらく前から出版元に縛られないコラボを色々とやっており、「ジャスティス・リーグxRWBY」や「バットマンVSデッドプール」などがあったりする。

またDCはコミックの人気作品を積極的にアニメ化しており、「バットマン vs ミュータント・タートルズ」もコミックが人気で、アニメ化され、コミックもアニメも日本国内で販売されてる。

ということでアニメのほう、普通に見ごたえあるアクションが見れるよ。

最近の日本の「スゴイsakugaアニメ」だと、どうしてもカット割りでごまかしたり3Dで振ってごまかしたりで、人体の動きをじっくりやることあんまないんだけど、こっちは誤魔化しなしでやります。一番の見せ場はタートルズの宿敵シュレッダーとバットマンの一対一の対決シーンで、ニンジャバットマンで全然見れなかったバットマンのチャンバラがしっかりと描かれていて「なんかジャパニメーションじゃないアニメーションしてるやつ見てえなあ」という欲求不満な夜のお供にジャストフィット。

 

youtu.be 

 

あとなあ。「バットマンVSクトゥルー」であるところの「ゴッサムに至る運命」( The Doom That Came to Gotham )のアニメもパッケージ版欲しいんだけどもなあ(配信では見れるが当然日本語訳はない)。

だんだん円盤市場が縮小してくし、アメコミ市場も縮小してくし、望み薄ではあるんだけど、「バットマンでガチのクトゥルー物やってるアニメ作品があるぞ」という情報が流れてすらなさそうなのでなあ。どっか拡散力ある方面で話題になんないかなあ(チラッチラッ

 

youtu.be

 

 

桂実「王妃様が男だと気づいた私が、全力で隠蔽工作させていただきます!」ゼロサムコミックス

 全3巻完結……というか打ち切り終了。3巻あきらかに巻きが入っており、それまで伏線が少しづつ散りばめられてた事件の真犯人が前後の脈絡など全て無視していきなり出てきたり、じっくり進んでいた恋愛模様が凄い勢いで進展したりで強引にケリをつけている。なお原作小説は普通な様子。

ということで3巻はだいぶ残念だが、1~2巻は多少の展開のぎくしゃくは感じるものの漫画としてはちゃんとしてて面白い。アニメ化された「機械じかけのマリー」にちょっと似てる。

マンガではそこまでたどり着かなかったが、3巻の巻きが入った結末的には王様と王妃様(男)と主人公のややこしい三角関係ドタバタがやりたかったんだろうなと。正直、とても好きな路線なので見てみたかった。

 

zerosumonline.com

リチャード・E.ルーベンスタイン「中世の覚醒」ちくま学芸文庫

一時期ついったの界隈で話題になってた本。

12世紀ルネサンスと呼ばれるイスラム圏からの知識の流入と受容のインパクトを主要なお題として、アリストテレスをキーワードに切り込んでいく、中世思想史の入門書。

哲学史、思想史、それも近代以前の宗教と深く絡み合ったテーマという面倒なお題なのに、とにかくわかりやすい。各時代の主役となる人物を中心にストーリーだてて整理し、人物伝の連続として読めるようになっている。中学高校の世界史に載ってて試験にも出るビッグネーム、アベラールやトマス・アクィナス、ウィリアム・オッカムなどがどういう人生を送り、何と向き合い、実際にどう凄いのかがわかるようになっていて、こんな読みやすい伝記本、中学校の夏休みの課題図書に指定しても全然いけるやろってレベル。それなのに通して読むと全体としての思想の流れまで、きちんと伝わる。超すごい。

この平易さは著者の本職が現代政治研究で、史学専門じゃないからと思う。おそらく史料研究の最先端についてはおいといて、それこそ初学者が教科書で習うレベルを意識的に順守したと思われる。実際、本筋に関係ない些末部分では訳注で最新研究ではちょっと違うという注がつけられてたり、訳注に注意喚起されてない部分も今どきだとこの言い方はしないだろうなーみたいな書き方だったり(異端カタリ派はアジアからの影響で出現となってるけど今だと異論あるので説的に中立をとるとそこらへん慎重な描き方する、とかそういうレベル)と、史料揃えて発表してここから議論する類の本だと慎重になるあたりの記述はあんま気にしてない。

専門じゃないのになぜ書いたかというと、現代政治に対する深く大きな危機感があって、政治学者として、現代の知識人として、教科書で書かれてる固有名詞にまつわる諸々はさらっと流され空疎な暗記で済む話じゃなく極めて現代的なテーマなんだよという話がしたくて、だけど歴史の先生がそのへん言わないから、しゃあない俺がやるわ、という機序だと思われる。なので中世思想史の人物伝が終わった後、おもいっきり現代の政治問題について語りだす(原著が書かれたのは2003年)。

そのへんの現代政治問題への著者の対応認識については、読者ごとに賛否あるだろう。が、実際、著者の危機意識のありかた、それを語るにあたって西欧中世思想史が問題のコアだと見抜いてみせたことは、結果、卓見だったのだなと思われる。

 

ナーロッパ談義大好きネット民ならば「中世暗黒時代とかいうけど全然そんなことないよ普通に学問も技術も発展してたよ」という説明は今どき耳タコだろう。「イスラムは文明進んでて12世紀に西欧はイスラムから知識を輸入して12世紀ルネサンスが起きたんだよ」も知ったかSNS煽りで死ぬほど繰り返されてきただろう。日本のネット民は歴史にクワシイのでそんなの朝飯前なのだ。

が。

「ネットで中世は暗黒じゃないんだーて言ってる連中、中身わかって言ってんのかな」と。

そう思えちゃうタイミングというのは、あるもので。

 

本書が取り上げる西欧キリスト教圏とイスラム文化圏との出会いの、全く同時代に起きた、もう一つの文化の出会いを描いて話題となっている「天幕のジャードゥーガル」という作品がある。

そのアニメ1話についたコメント。

  

キリスト教が反科学に向かっていた時代にイスラム教は医学や天文学(当時は占星術と渾然一体)を発展させた。

https://b.hatena.ne.jp/entry/4789698244944757858/comment/hatebunbun

 

大きく支持を集めているわけだけども。

このひとは俺よりずっと知識があって本も読んでるんだろう。で、そういう感じのコメントを書いたし、支持を集めた。

けどまあ、上の引用は事実ではない。イスラム文化圏が文明の中心となり洋の東西の交流を促進させ学問が発展した時代、西欧は単に田舎で、荒廃し、古代ローマが残した文明の残滓を維持できるだけの余力がなかった。建造物も文化も技術も、忘却されたのはカネもなければ人もいなかったためで、キリスト教会組織やキリスト教圏が「科学」(引用先のソレはたぶん自然科学のつもりで書いているのだろうけど、何も考えてないで使ってるかもしれない)に背を向けたわけではない。経済的繁栄を失い技術者の育成もままならない現代日本で日本維新の党や参政党が一定の政治決定権を握ってるような「反科学的な政治決定」は、あるいは当時あったのかもしれないが、現実としてキリスト教組織にはそんな政治力はまだなかったし、キリスト教として「反科学」を進めるような教義が採択され教皇様が推進したわけでもない。

では、なぜ引用先のコメント主は、ああ書いたのか。イスラム文化圏からキリスト教圏に知識が流入したことを知っているのだろう。にもかかわらず、「西欧中世は暗黒時代である」という昔々のドグマは頭から抜け切れていない。結果、「暗黒中世西洋キリスト教とイスラム世界の素晴らしい知識」という対比構図を思いついてしまった。もともとの筋で言えば「中世は暗黒じゃないよ」という解説にこそ12世紀ルネサンスは引用されるんだけども、全く正反対の接続をした。

日本のSNS文化圏では、しばしば「キリスト教下げ」が大変に好評で、よく支持を集め、目立ちたい人の持ちネタとして定期的に披露される。このコメントもその文脈にあることは容易に想像できる。たくさん知識を持ってて披露できる人でも、というか、日本の歴オタクラスタって全体傾向日本好きすぎるせいかアンチ西欧も好きで、なんかやたら歴史知識披露したくて他人の投稿に「史実はこう」とかやる人ほど、なぜかキリスト教叩きネタは修正せず放置しがちで、まあ日本スゴイの変奏なのだろうが、結果、歴史に対する、あるいは知性に対する態度としては、だいぶ怪しい、ご自身がまさに「反科学」なところになってしまったのだろう。

 

本書はまさに、こうした「科学」という概念をふわっとした使い方してしまったり、「中世は暗黒時代じゃない」と言いつつ思いきり中世暗黒時代ドグマにどっぷり浸かって気づかなかったり、どっかのアンデルセン神父や埋葬機関の見過ぎでローマカトリックをへんなほうに過大評価しがちだったりする現代ネット民に、とても優しく「それ違うよ」と教え諭してくれる。モンゴル帝国がイスラムの知識を吸収しようとしていた、という筋書きのジャードゥーガルの全く同時期に、モンゴルと同様に力を蓄え外への拡大を志向した「ヨーロッパ」があり、イスラムの知識を積極的に吸収することを選択した汎ヨーロッパ組織としての実力を備えるにいたった「キリスト教」がその時期にあったこと、その「キリスト教」がその後の地域国家権力との権力闘争に敗れ中世が終焉に向かうとき、はじめて「反科学」としての「キリスト教」が顔を見せること。「キリスト教」が「科学」を実体として包摂し推進もしていた中世という現代の学術の揺籃期(欧州の大学はだいたいこの時代に発祥をもつ)を否定するためにこそ、「暗黒の中世」の概念が用意されたこと。

著者が執筆当時の政治状況から今のトランプ時代を予見し、先回りして忠告を与える形となった本書の内容が、結果、現代日本ネット界隈の残念な何かに対する赤心の忠言となっているのは、当然といえば当然なのだが、他人事とせず感謝して拝聴したいと感じいった次第。

 

「悪役令嬢ですが、幸せになってみせますわ!アンソロジーコミック14」ゼロサムコミックス

結構なベテラン勢参加で全体のレベルがやたら高い。

展開のフリーダムさも様々なら、結末の幸せの形も様々。

 

  • 城鐘ナコ「クセつよゲーム?そんなの関係ありません〜断罪後の悪役令嬢は余生を静かに暮らしたい〜」

自立する女性の理想像、ヒーローとしての悪役令嬢のバリエーションも広がり続け、本作では婚約破棄断罪イベントで没落した侯爵令嬢が家事清掃に牧場手伝いにウーバーイーツに二郎店員とバイト掛け持ちしまくりで逞しく日々を過ごす。ちなみに舞台は現代ではなく(多分)ナーロッパ風近代宮廷風のどっか。ノリがいい。

 

  • 宮本福助「死神と令嬢」

「見える子ちゃん」ばりに霊的存在が見えまくる令嬢が怨念渦巻く宮廷の瘴気と女癖が悪く女性の生霊を引き連れまくりの婚約者を処理しきれず結果婚約破棄されて幸せを掴む話。

超絵が上手いベテラン漫画家がかなりバッサリと大鉈を振るった感があって説明や展開は最小限で絵的に美味しくまとめてある。

 

  • 八坂アキヲ「傍若無人王子をヨシヨシしてたら、どこに出しても恥ずかしくないヤンデレになりました。」

転生前はオカンだったので幼少期の駄々っ子王太子を母親の愛情で包んだら立派なマザコンになってしまい自立できなくなったけど、どうせ婚約者で結婚するし、まあいっかー、みたいな

 

  • 尾羊英「私の知ってる童話じゃないけど!」

「今日からおまえの名はシンデレラよ!」という台詞を聞いてシンデレラの世界に意地悪義姉として転生してしまったヤバい断罪回避しなきゃと頑張るのだが、アレアレなんかおかしいぞ。

 

  • 式部玲「顔だけと言われた悪役令嬢は死に戻って恋に惑う」

断罪処刑で時間巻き戻りやり直しで善行積む系テンプレ。

 

youtu.be

ちなみにゼロサムコミックスであるにも関わらず、「公式」であるはずのゼロサムオンラインでは作家名でもアンソロジー名でも各作品名でもヒットせず、情報が完全に削除されている様子。おそらく最新刊告知しかされない。一迅社や親会社の講談社は全体に各電子書籍アプリに丸投げ経費削減方向で動いてる気配で、既存単行本方面をフォローしてくれそうにない。pixivコミックで人気作品として上位ピックアップされてても重版かからないのがザラだし、その上に出版社で公式情報も出してくれないとなると、いよいよコミックスの先行きは不透明ぽい。

 

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