続き3

さて、となると、当初予定されていた解決編はどんな形だったのだろうか。
ひとつの可能性は解決編は出さないというものであるが、「罪滅し編」の展開からするに、各ヒロインの視点からの異なる展開、異なる惨劇が用意されていたと考えるのが妥当に思える。
7作目「皆殺し編」の冒頭で言及されて混乱を巻き起こした「ルールを推理せよ」だが、これは要するに作者サイドが用意した謎解きは「犯人の名前あて」ではない、という程度の意味合いにすぎない。問題は、7作目の冒頭で「3つのルール」について声高に言及しなければならなかった理由である。「3つのルールを見極める」は、クトゥルフTRPGのシナリオクリアとしてみると妥当(シナリオ終了時に事件の背景についての情報を知っているとボーナスにSAN値が増える、てのがシナリオ集に書いてある)だが、出題編の4作のTIPSなどの作りを見るにTRPG的な謎解きに拘っていたとは思えない。つまり、大幅な路線変更があったために原点回帰せざるをえなくなったのだ。
謎と惨劇の投げっぱなしで全てを終えるはずが、ハッピーエンドと推理の回答を導入しなければならなくなった。その方針転換で、それまでの惨劇の連続に対して「ルール推理」という言葉で決着をつけなくてはならなかった。

当初の形が投げっぱなしである理由として、同人版で分岐を廃していたのがコンシューマー機では選択肢のある分岐シナリオの形に変更されている点を挙げてもいい。選択肢を廃したことで「より正しい結末」を廃したのが「ひぐらし」であったのだから。「被害者の出ない正しい結末」に至るための道筋であったなら、選択肢がないことに拘る必然性も薄れる。結果的には路線変更によって分岐シナリオの呪縛に囚われたわけだ。