塵骸魔京あらかたネタバレ

 問答無用にネタバレ。

 えーと、全体構造的には『Fate/stay night』を頭で理解してウリどころをきっちり捉えた出来の良いコピー品。なので、以下はFateのネタバレでもあり。

 例えば、一人称主人公の思考のズレ方の描写は同メーカーのハロワのロボ主人公を思い起こさせるが、これはニトロ流の衛宮士郎の役割解釈と考えるほうが妥当。「心臓がない」カツキの設定は、士郎と聖杯の設定のミックスだろう。
 また、三人のヒロインにシナリオが大きく分岐して、各シナリオでは同じ敵キャラが使いまわされ、組み合わせやバトル展開、結末が毎回異なるリーグ戦形式で。これが『Fate』のようにシナリオ読む順序を制限してない開放的な作りのために「一方で大活躍したキャラが他方でザコで何やってんのか」みたいな評になったりする。
 あとは飯の描写が(味の批評つきで)多いとか、魔力供給エロとか。

 で、分岐シナリオとしてバランスとれてて出来がいいので、結果的に「物足りなく」なる。即死エンドにつながる選択肢が多い作品だが、そのうち、主人公の特異な性格と、シナリオヒロインの尻を追いたいのと、どちらかの二択を迫るようなのが幾つかあり、主人公の設定性格に近しいと思えるほうを選ぶと即死。そうして主人公が人間的な性格に近づいていくエンディングに辿り着く。なので基本的にはヒロインとの恋愛がシナリオの本筋であり、そのため敵とのバトルは副次的要素となり、結果、「今までのニトロの作品よりバトルが盛り上がらない」と言われたりする。今までのニトロ作品は、共通シナリオが長くてヒロイン分岐が後半だけで、何回もプレイするとやらされてる感がどうしても出てしまって分岐シナリオとして難アリが多かったんですけどね……。一方を立てれば他方が立たず。
 さらには、どうしても戦わなければならないわけでもない、と戦闘の決着を回避する分岐まで丁寧に用意してしまってるので、分岐シナリオのアンチドラマ性がモロに出た形となった。

 特筆すべきFateとの差異としては、シナリオ展開のためだけに妹を配したところ。Fateの士郎は「正義の味方にならなければならないという思い込み」というメタ物語的な設定によって駆動するわけだが、こちらでは代わりに「妹を守る」「妹の復讐」等を配してる。結果、妹は必ずひどい目にあう。ONEの妹の死の回想をリアルタイムのドラマ展開でやってるようなもの。