とらドラ・ポータブル!

コードギアス LOST COLORSに比べると、個々の素材にしてもなんにしても、非常に丁寧な作り。
なんだけど、LOST COLORSが場所アイコンを指定する程度の大雑把な作りなのに対して、考え方がいかにもノベル系AVGが主流になった以降の、豪華さを意識したデザインであるおかげで、なんつーかこー、めんどくさい。

たとえばフルボイス。なんぞ先日、フルボイスの話を見かけたので細かく言及するが、LOST COLORSの場合、会いたいキャラのアイコンを選択して会いたい相手とだけ話すので、基本的に声も聴きたいし、喋ってる台詞を全部聞いててもそんなに長くない。それに、話相手は基本、プレイヤーキャラクターである主人公に向かって話しかけてくれるので、相手にしてくれてる感がある。

一方で、とらドラPの所属する、現代的なノベル形式AVG。これはもう、今のエロゲの基本思想がこうなっちゃったのでしょうがないのだが、プレイヤーの存在はおいてけぼりでシナリオライターの動かしたいキャラ同士の掛け合いが繰り返されたりする。そうすっと、当然ながら話してる内容が、プレイヤーキャラクターという立場からみて「俺にとって関係ない話」を、目の前で繰り広げられたりする。これを延々と聴かされるのは、当然ながら辛い。
で、とらドラPでも、春日と能登のクラスメートコンビが目の前でボケ漫才めいたことをやったり、あるいは幸太くんとさくらちゃんのデレ会話をきかされたりするのだが、こういうのは、まぁ、登場人物の人間関係を、説明台詞をつかわずに丁寧にみせてくれているわけだが、当然ながら「俺(記憶喪失中の竜児)がハブられてる」よーな形にならざるをえない。そうすっと、いちいちフルボイスを我慢して聴く気にはなれなくなる。

コンピューターゲームとゆー形式は、なにはともあれ、プレイヤーがなにがしかのアクションをしかけたとき(Aボタンを押すだけであっても)、何らかのリアクションを返してくれ、そこでモニター画面内と現実とがリンクする形が成立して、意味がある。それがないと単調な画面に興味を持ち続けるのは難しい。それをフルボイスの台詞の扱いに適用するなら、Aボタンなり左クリックなりを押して、それが<ボイスを中断する>なり<次の文章に進む>なりのリアクションに繋がった方が、ボイスを受け身で聴かせるよりも、意識をゲームに対して繋げておいてくれやすい、となる。逆に、Aボタンを押させないでボイスを聴かせようと思うなら、基本、画面側から現実のプレイヤーにリンクするようキャラクターからプレイヤーの方に話しかける形式が効果的だ。

とらドラPの場合、シナリオはかなり丁寧なので、殆ど「置いてけぼりにされる不満」が目立つことはない。むしろ大河の細やかな気遣いが感じられたり、あるいは(記憶喪失後の)初対面時の亜美とのやりとりの流れにしても距離感がよく表現されていて、そのへんはかなり「相手にしてくれてる感」がある。逆に、そのへんの丁寧さが逆効果に出てしまうタイミングがあって、それが「お話を語るメディア」という扱い方と、「フルボイス」というサービス過剰感のある仕様とのズレをよく見せてくれる。