戦場でワルツを(ネタばれ注意)

 三拍子に乗ってバトルシーンてーと「約束はいらない」だよなと思いつつ映画館に入場。それがあとで効いた。

 世界中で賞総なめというわりに、けっこう困りものの、微妙な映画。

 アニメでドキュメンタリーだと某「昭和天皇の決断」が「川上監督の決断」に差し替えられた都市伝説で有名なアニメンタリーですね! と同行者は息抜きを心がけつつ見ていたようで、実際、真面目に見てしまうと面倒くさい。アニメーションでかつ「ドキュメンタリー」の形式を採用し、関係者インタビューから状況と時系列を再現してく形式だけど、そこに「監督自身の失われた記憶を辿った体験をノンフィクションで綴る」筋書きが覆いかぶさってインタビューでのコトバにイマジネーション全開の映像(どこぞのMTVやフラッシュ動画あたりで見飽きたような狙ってチープ感を演出するたぐいが半分)が重ねられてく。

 たしかに、アニメで強調すべきところを強調した映像で証言をビジュアル化するのは非常に効果的な手法で、クソ真面目にインタビューだけ撮って埋もれるよりかは視聴者に鮮烈に直接的かつセンセーショナルなイメージを伝達できる。同じイスラエル映画「キプールの記憶」の戦ってる兵士の一人も写されない戦場というシュールな映像あたり受け継いでるんだろうし「実際の戦場に放り出された非現実的な乖離的な感覚」を伝えているとも言える。

 なんだけども、主観に寄り添いすぎてあまりにナイーブすぎる映像の果てあっさり「実際の虐殺シーンの記録映像」にラストを譲るのは、どう考えてもドキュメンタリーの方法論からはあまりにかけ離れてる。はじめに結論ありきの、しかも「虐殺です悪です悲劇です」レベルの踏み込むかなり手前で思考停止して流されてます的な代物の提示のみで、んでさらに監督側も評価側もノンフィクションとして扱いドキュメンタリーで賞をとったりしてるとなると、もにょる。

 扱われた実際の虐殺事件を知らしめる効果や、当事者による主観的な独白を否定しても仕方ない。ただ、ガンダムからこっちアニメで戦争の悲惨さみたいのを語るのが是か非かなどというオタ論議サブカル論議のナイーブさ、頭の悪さとどう適切な距離をとるかを積み上げてきたはずのオタ界隈としては、火薬庫から批評家リレーを経て手渡されたのがセカイだかゼロだかデータベースだかな人らの格好のエサみたいな代物だった事実が、逆に重たい。