いのちの子ども

イスラエルドキュメンタリー映画

http://www.inochinokodomo.com/

えー。あえて、紛争地帯が舞台の、リアル人命がかかってた題材のドキュメンタリー映画に対し、非常に不謹慎な感想を述べさせていただきます。

すっっっっっっげえ面白い!! ありえないぐらい面白いからコレ!

いやね、題材としちゃ、イスラエルパレスチナの間で難病の赤ちゃんを救うために努力する人たちの話、とゆー、いかにも「感動のストーリー」じゃないですか。でもってドキュメンタリーだからつーても、いかにも周辺事情の困難について語ってそうじゃないですか。

全然違うから。いや、全然違う話だとゆーのはhttp://www.doi-toshikuni.net/j/column/20110604.htmlを読んで知ってはいたんですが、やっぱり実際に見ると段違いに凄い。

最初から、やたらBGM流しまくるんで、違和感あったんですよね。ほら、「ドキュメンタリー」ていうとBGM抑えめ編集少なめで、いかにも真実を客観的に撮ってます、という絵面にどうしても慣れてるじゃないですか。なのに初っぱなからBGM鳴るわ監督の独白ナレーションは煩いぐらいかかってくるわ、NHKスペシャルよりも作為性が目立つ代物で、ナンじゃこりゃ、とかなるわけです。

そんな、綺麗な代物じゃなかったんです。そもそも、この映画の監督が話を持ちかけられた経緯からして、医者がマスコミの影響力を利用して子どもの手術費用のための寄付金を集めようとゆー話ですから、「金のためにメディアの力を呼び込む」ことに凄い自覚的なオープニング。それを受けてか、この映画の中心ヒロインにあたる子どもの母親の最初の台詞もふるってて「息子の手術をイスラエルプロパガンダに使われるんじゃないかと警戒してる」と言い出すんですよ。んで、そこに監督の演技過剰な心情独白をこれでもかと被せてくる。徹底してメタ視線のドキュメンタリー映画なんです。実際に見ると、パレスチナ問題を背景にヒューマンドキュメンタリーなんてこの手法じゃなきゃ作れなかった、と思わされます。パンフでみると、どうやら出資者が「母と子だけじゃなくて監督自身についてもテーマに含めて映画にしろ」とゆー条件を出したかららしいんですが、出資者えらいです。

そんなわけで、編集しまくりBGMかかりまくり監督の独白ナレーションありまくり、それどころか監督の顔出しも監督の活躍も入ってきて、お綺麗さの欠片もない。ここで盛り上がりが欲しいなとかゆーとガザ空爆のショッキングな映像とか入れまくりです。いや現実起きたことに従って順序立てて作ってるだけで盛り上がっちゃうような話なんですけど、そんだけ「どこがどうドキュメンタリー?」と思うぐらいエンタメしまくりだというのに、話は全く収束していかないんです。パレスチナ問題だから収束しないの当たり前とか言わない。カメラが掘り下げていくほど、出てくる人たちの間のズレ、断絶がどんどんさらけ出されてく。その断絶にはもちろん被写体と撮影者の関係も含まれますが、他にもいろいろドラマが立ちすぎてて出来すぎなくらい。主題はもちろん「命の尊さ(と命の軽さ)」なんですが、見てると「命の扱い」にオーバーラップしてくるのは「現実と虚構」の最前線のせめぎ合いです。リアルとフィクションてのは、別段、リアルとフィクションで単純な二項対立になったりはしないんですよね。それぞれのリアルとそれぞれのフィクションの個々が、日々入れ替わり立ち替わり、重なって、ぶつかって、変遷してる。そこがきっちり捉えられてると感じました。

 ここまで凄いのはもう、圧倒的に母親のラーイダさんの存在感だと思います。どの発言も、くると判ってても、腹の底まで響きます。

 しかしそれにしても、つくづく出来のいい映像なぞとは言えません。単純に優れたドキュメンタリーと言うのも、ちょっと違う気がします。監督と子どもの母親ラーイダさんとの、男と女のドラマが余すところ無く写し出されてる、というのが正しい説明のような気がします。