祈先生補遺

祈先生が他のヒロインたちと異なりマップ画面上での横並びの時の刻みから切り離され取り残されていることについて、シナリオの側では永遠の時を生きる吸血鬼や八百比丘尼の類のイメージが参照されることになる。若い美少年のつまみ食いはしても、交渉は一度きりで終わり。特定の恋人を作らない。占星術が得意。彼女の出身地や故郷に関する情報は謎につつまれている。というより、出自が定かでないことを別ヒロインのシナリオ中にわざわざ話題として取り上げ強調している。また、魔女の使い魔よろしく人語を理解するかに見える祈先生のペットの土永さんは、昭和前半の戦中戦後時代の時代錯誤な話題をしては「いつの時代の生まれだ」と突っ込みを入れられ、あるいはオウムでありながら鳥肉を食う(同族食らい)ことをしばしば要求する(全てギャグとして処理されるのだが)。祈先生のシナリオで土永さんの嘴から語られる彼女の抱える秘密の過去については、それが嘘ではないにしても、主人公を拒む理由の全てではないだろうと思わせる。
これは、設定上彼女が人ならざる存在であることを証明できるできない、という話ではなく、彼女が一般社会と異なる時の流れを生きる存在であって、人外の存在に近しいほどの対人距離の取り方が祈先生の通常の態度である、という程度の話である。ノベル物の常で、深読みしてもしなくてもいい。