つよきす

カニとラブラブエンド。もはやこいつのエロシーンで抜くことなどありえねえ。
まあ、こんなもんか、ぐらいの話かな。
やっぱし、全般的に「姉しよ」の頃よりか文章のテンションが落ち気味。
登場人物が多いのと、主人公がエロゲーの主人公でないのと。俺は相手の身体を求めることしか考えてなかった、とか反省するんだもの。普通のエロゲーみたいに、そのまま突っ走る(バカップルの描写をやらせたら右に出るものなしのトノイケダイスケシナリオをみよ)ことが出来ない分、テンションは下げざるをえない。で、この「相手との距離のとり方をはかる性格」を主人公の語りに明示的に組み込むてのは、男性サブキャラを大勢出すのと同様、ツンデレていうお題から来る作品上の要請(同時に、ツンデレを要請する時代の流れ、でもある)なんで、悩ましいところではある。「月姫」にしたところで、古参のエロゲーマーは「イマドキはこういうのが流行るのね」みたいな距離を置いた、いかにも冷めた言い方をするが、それまでの流れがあったからこそ、その形を呼び込んだのだし。
あたしとしては、『CLANNAD』の反動的態度よりは『つよきす』のローテンションを受け入れたい。
まあ、最近Prismaticallizationの文章を読み直す機会があったんで、あの狂ったノリが最近見れないのは物足りないなあ、とは思いますけどね。

柊は足先を、川の流れの中で緩やかに揺らす。控えめに跳ねる水玉。水面は柔らかに柊の脚を包み、伴って微かな、ささやきをもらす。柊は片脚を上げる。その踝から水の雫が、ゆっくりと下肢を伝っていく……
「……下着が濡れるぞ」
「わざと言ってるでしょ、そういうの。こういう雰囲気、嫌い?」
……柊は俺を知っている。俺からすれば、不利だ。手札が足りない。
言葉のやり取りは、いわば情報戦だ。入念な準備と、肝胆の推知、そして適切な戦略が必要だ。それらを怠った会話は、無意味ではないが、徒然に堕するだろう。
「ふむ……では、どんな台詞が適当だ?」
柊は目線を僅かにずらし、遠くを見つめる。
「そうだね……よくあるのは……いつまでもこうしていたいね、とか」
「『止まれ、お前は如何にも美しい』」
俺の言葉に柊は呆然とし……そして一瞬後、呵々として大笑う。
「言ったね、ファウスト博士! ……全く、この男は!」
柊は片手で顔を隠しながら、ひぃひぃと肩を振るわせる。
「…そんなに可笑しいか」
「全然、似合わないんだよ。もうちょっと手加減してって」
ファウストが賭したのは、自らの心だ。常に前へと進まんとする、昂進の意志に迷いが無かったからだ。僅かな停滞も許さず、だからこそ、時間に対する静止の言葉は、有り得なかった。それは俺には不可能だろう。しかしその意味では、かの台詞は俺にとって適当だ。
(『 Prismaticallizationドリームキャスト版より )