Prismaticallization DC版

 ああもう、笑えるわ、やっぱ。

>そもそも、荷物持ちをジャンケンで決めようと言い出したのは、柊だった。
 酷くノスタルジックで、極めて幼稚な提案だ。
 ……勿論、俺が負けたのだが。
 グーで負けた。グーで負けるというのは、保守的なために敗北したかのような、苦い後悔が残るものだ。
 ……しかし、たとえ俺が勝利したとしても、だ……
 いい歳をした高校生の男が、連れの女子に、自分の荷物を持たせてご満悦……などということが、ありえるだろうか?
 いや、あるまい。
 そのときは、いやヤッパ俺が持つよ、などと言いつつ、彼女の分も担ぐのが男というものだろう。
 一応、今時の女子高生である柊が、その程度の打算を働かさないとは考えられない……これは、仕組まれた巧妙なワナだったのだ。
「ハメられたよ……」
「なにブツブツ言ってるの!」
 ペシッ。

> ……そもそも俺は受験に対して、それほどの気概など持ってはいない。
 学生とは社会的責任を棚上げされ、それ故に、隔離されて生活することを強いられた者達だ。
 受験生の場合、特に一般社会からの乖離は大きい。そこにあるのは、腫れ物に触れるような扱いだ。世間というものは、イリーガルな存在を排斥する作用がある。これもその一種なのだろう。同じ状況にある同級の連中は、しかし収容所の内部で、むしろ安穏と暮らしている。
 受験というものは、つまりは、学生生活というモラトリアムな期間の延長に際しての……形式的な通過儀礼に過ぎないのではないだろうか?
 日々遅くまで机に囓り着く、蒙昧の徒。それはただ、免罪符を得ようとする行為でしかない。その滑稽さと無意味さは、当事者である俺達こそが、最も理解している。
 ……しかし、では、どうすればいい?
 逃げ出すだけの度胸も無い。みすみす、今の特権を失うような真似もしたくない。それが偽らざる、俺達の想いではないのか?
 ……俺にできるのは、だから、ただひたすらに、無為に、怠惰に、生きることだけだ。受験に失敗するのなら、それでもいい。意志を押し殺すことで、『自分』というものの責任を極小に保つ。そうやって、見せかけの心の平安にすがるのだ…

 言ってることは西尾維新の主人公と変わらないはずなんだけどなぁ。なんでこっちはブーイングがとんで、あっちは売れるんだろう。時代が早すぎたか。