ひぐらしインタビュー

「礼」を虎の穴で買ったらついてきた、過去5回の作者インタビューをまとめた冊子。4本目を出したあたりから、新作発表ごとに1回づつ。

けっこう、うかつなことを言いまくっている。このインタビューで見る限り、作者サイドは何も考えてない、と言ってよさげ。インタビューをコントロールしている、てレベルでもない。
まあ、作家がインタビューで言うことを真に受けてたら作品なんて必要ないわけで。
例えば、インタビューでは「投げっぱなしは嫌い」とか言っているわけだが、言葉の捉え方はいろいろあってね、作者が全て語り尽くしてあると思っていても、読者から見て説明不足に見えるなんてのは当り前なんで。

さて、僕個人が強く主張していたのは、『月姫』から『Fate』に移行する過程で切り捨てられていった要素を受け継いだのが『ひぐらし』である、というもの。

つまり、「投げっぱなし感」である。

暴論を承知で書くが、『月姫』の洗練されてなさ、荒削りであることそのものが、シナリオ分岐という「ナラティブに洗練された小説文体の形式からの離脱」のために必要であったことは間違いない。一般的な小説は「ひとつながり」の形式に特化することで洗練を重ねてきたのであって、枝分かれしていく文章においては、先だって書いたように伏線も含みもへったくれもなくなってしまう。台詞に下手に含みを入れ込めば「これは別の展開に進む伏線か?」と思われ、そんな展開はない、とわかれば説明不足だと非難される。通常の小説ですら、その手の批判は絶えずあるわけで、「読者の欲望により多く応える形式」だと思われている(実際はそんなことはない)分岐シナリオにおいては、「説明不足」という非難に晒される可能性は常にある。そして、同じテキストを何度も読み返すことをプレイヤーに要求する分岐シナリオは、そうした「抜けている可能性」を読み落としではないかと危惧させ、読みの労力を倍化させるという負い目を抱えるゆえに、一部の読者の「説明不足」という言葉に対し敏感にならざるをえない。病的なまでに説明を増やしていかざるをえなくなり、殻に閉じこもるしかなくなる。