Gardenについて

http://www.cuffs.co.jp/main/archives/diary/?p=1

拝読しました。

当時の自分の反応を見返してました。大概狂ってますね。
当時、発売前に、知人が資料作成の仕事を請け負っていて、素材が全然こない、現時点でCGがX枚しかない、という聞きたくないときに限っての事前情報がやたらと耳に入ってました。それまでは、そいつもエロゲ業界にさほど踏み込んでいなかったというのにです。彼に対し、いっそメーカーに紹介しろ手伝うから、という言葉を言いかけて何度か飲み込んだり。何処にいたとて何をできるわけもないのですが、まあそんなです。
元を辿れば、事前情報で主人公に実姉がいると知ったとき一抹の不安がよぎるのを追い払いながらhttp://d.hatena.ne.jp/tdaidouji/20070526、なぜ実姉の設定が必要なのかを延々と書いたりhttp://d.hatena.ne.jp/tdaidouji/20071022していました。体験版で幼なじみのくだりを読んだとき、殆ど冒険に近いものを感じ取り、ゲームシステム・デザインのレベルであまりにも困難ではないかと不安がつのりました。それまで培ってきたノベルゲームのシナリオの技術的な方法論から離れた上での、男性主人公の小説的な意味での主体性を分岐シナリオで確立しようという試みに見えたからですが、私の方では、そこにある方法的な矛盾を解決することは殆ど不可能事だろうと、そのつい半年ほど以前に書いた同人原稿の準備考察でもって、そのような結論に勝手に至っていたのでした。
実際、当時、分岐シナリオを巡る実験的な試みはほぼ終了し、ノベルゲームは分岐や選択肢をシナリオの技術的発展としては活用せず、冒険しない程度におさめる形に落ち着きつつありました(今に続く形です)。拡散するシナリオとシナリオの連続性の調停を行いながら主人公の主体を立ち上げる、その技術的な問題に真正面から立ち向かう、その格闘を期待できるのは、もはや一人しか残されていないとすら言える状況でした。だが本当に可能なのか。およそ、そんなことを勝手に想像していたわけです。
入ってくる情報はCGの足りなさ。シナリオの話は全く出てこない。にもかかわらず、それまでのタイトルでは頑なにつけていなかった音声をつけるとか、あまり雰囲気にあっていないOPデモが流れるとか、ネガティブな判断が働く情報ばかり流れてくる。そんな時期が続きました。ですから、駄目だったと知ったときの、やはり、という諦念の感情と、あれほど期待したのに、どうでもいいサブ要素ばかりを付け加えやがってという、「俺こそが作品を一番理解できるんだ」という思い上がったファン感情ですね、今書いてるのもそんな代物の残滓ですが、噴き上がる逆恨みとでもいいますか、そんなものがあったんですよ。当時。それらに突き動かされておりました。「盗人に追い銭」とか、そこそこ辛辣なことを書いていた。
そんな身ですから、今さらファンである信者であるなどと言えた義理ではない。ただ私は、シナリオに滲み出る貴方の誠実さと生真面目さに、多くを求め、託していました。小説の偽物でもなく、映画のデッドコピーでもなく、漫画の出来損ないでもなく、独自の表現手段たりうるノベルゲームという形式を、小手先でなくシナリオの側から支えてくれることを、勝手に期待して、勝手に背負わせ、勝手に失望しました。そして今、勝手に、こちらの気分で懺悔させていただく。
2008年は、間違いなく、ひとつの時代の終焉でありました。私は明らかにノベルゲームから離れました。ずっと待っていたなどとはとても言えません。ですが、言わせていただく。
おかえりなさい。