続き3

ここまで前フリです。長い。以下、本格的ネタバレ。


さて、物語では里沙という人間の少女が登場します。彼女はやや性欲過多な性質で、定期的にアダルトグッズを買いあさり、男性主人公の祐一はそんな彼女のアダルトグッズ探しの面倒を見てやることになります。ちなみに祐一は風俗街で育った元ホストで風俗や裏商売の方面に長けており(しかも女性を惹き付けるフェロモンを振りまいているという設定)、ちょっとしたダークヒーローの趣がありますが、この里沙と祐一の関係が、発情する人型犬とその面倒を見る飼い主の関係と被るように描写されます。
人の側の事情を犬のそれに近づけていくわけですが、この「人の側の事情」の決定的な描写が先に引用した「一択」で、主人公の祐一が里沙の処女を金で買うというものです。端的に言って買春ですし、その購入金額は数百万円で祐一の側はその時点で里沙を抱く気がなく、実質は本格的な人身売買と言って構わないでしょう。
人型犬は一匹につき車と同じ価格帯で売買されるという説明がなされますが、里沙は犬を買うために自分の身を売ることになります。この入れ子構造を納得し了解することを、「一択」の形でプレイヤーに求めてくるわけです。ここで里沙と祐一の関係は、実質的にも形式的にも人型犬と飼い主の関係と変わらなくなります。(里沙とセックスするシナリオ展開では、さらに「結婚」だって同じじゃないか、と話を広げてきます)
一方で、シナリオは犬の側の心の動きも詳細に描写します。もちろん、犬であっても人間と変わらない、という形で。性欲と愛情の間で揺れ動く警察犬カイエを巡る話では、もう一人の人間の女性の撫子と祐一の関係との類似性が示されます。