続き

 ということで、ここではエピソード単位の再現を諦めるとして、改めて、どのようなテーマで再構成するかに話を移行する。

 本作のテーマは「少年少女たちはロケットを作らない」「翼を手に入れるのは巣に帰るため」である。この視点に沿って作品を見渡すと、まず「帰る場所」の具体的な形はシナリオごとに異なっているのが見て取れる。人間関係および共同体が先行しており、人間関係が維持されるために副次的に島や寮といった場が要請される。ヒロインと男性主人公が結ばれることと、旧来からの人間関係を壊さず引き継ぐこと、人間関係の維持される空間としての場が保存されることが、ひとつながりのテーマとなる。
 で、当然ながら、上記について作品内の描写で重視されるのは島全体の景観、思い出の風景、空気のうまさ、などではなく、キャラクターおよびアイテム、記号となる。主人公らにとって大事なのはいつものレストランで注文するクリスタルパフェを食することであって、パフェというアイテムにまつわる人間関係が大事だからレストランが維持されることを望むのである。原節子原田知世の歩いていない尾道を克明に描写されても、それは単なる観光地案内である。そのへんわかれ。

 とりあえず、ここまでで切り。

・結論2

 前に進むのは現実・後ろに進むのはファンタジー