劇場版AIR

オウムだエバだと騒いでた90年代半ばから後半ごろに100円ショップの普及などでプラスチック素材のイメージが大幅ダウンし、それに代わってクローズアップされたのがアジアン雑貨ブームなどにみられる自然素材ものだったのですが、その流行りが「もう終わる、今年こそ終わる」と言われながら次を見つけられずにズルズルと5年6年7年と売り続いていた雑貨・インテリア・ギフト業界に、2年前にガツンと登場しあっというまに広まったアイテムが亀山ローソクことカメヤマキャンドルのジェルジェムでした。そのゼリーキャンドルで作られたいかにも石油製品らしい人工的な色調と触感はあらゆるところで歓迎され、雑貨店、生花店やケーキ屋などの店頭がジェルジェムでディスプレイされるのみならず、先月行った日本の秘湯・貝掛温泉の土産物売り場にまで陳列されるにいたっています。
カメヤマのジェルジェムが卓越しているのは、その人工物らしさを徹底的に武器にしている点で、今年新発売の「ジェルジェム・さくら」の大成功はまさにそれがゆえでした。実は今まで、桜の季節をモチーフにしたこの種の雑貨というのはあまりなく、ジェルジェムのさくらはほぼ独占市場といっていい。
他の季節商材だとそんなことはない。物日と呼ばれるクリスマス、ハロウィン、母の日などは関連アイテムが目白押しですし、季節ごとに売る風鈴や秋向けドライフラワーは一捻りも二捻りもしたものが並ぶ。ではなぜ桜関連のアイテムがなかったのかといえば、リアルの桜がそこらじゅうに植えられているからでした。季節感の欠片とてなくなって久しい高層ビル立ち並ぶ首都圏でも郊外の新興住宅地でも桜だけはどこかに植えられていて、どれほど植物の名前を知らない人でも桜だけは9割9分知っている。だからこそ、メインをはる桜を「季節商品」として取り込むということはなかった。逆に言うならば、その他の商品化された「季節商品」は既に視界から消されたものによって構成されてきた。雪が降らないからこそ雪ダルマの人形を、海で遊ばないからこそ貝殻を買い求める。自宅の庭を潰して自家用車のガレージにしてしまったから、紅葉を縁側から眺めるかわりに観光地に車で行って紅葉の写真を撮ってくる。
しかし、ジェルジェムはついに桜をも商品化した。桜が視界から消えたわけではなく、おそらくもっと積極的に季節を消費アイテム的なものとしてしか受け取らない、人工的であることに積極的に価値を見出す、共有される空間の変化ではなく自己が所有・装着するアイテムの変化によってのみ「季節」を見出す、そんな購買層が着実に形成されていっているのではないかと個人的には考えているのですが、つまり自分のものにならないリアルより自分のものになるバーチャルを選ぶというですね、それってギャルゲーやってる俺らのことじゃんってのはおいといて、そういうバーチャルであることがある意味でリアルと等価、場合によってリアルであることより価値を持つていう時代の到来を「ジェルジェム・さくら」は感じさせてくれたわけですが、えーとAIRの話ですね。
神奈のパート、のっけから桜の花びらがそこらじゅうに舞っています。中盤まで舞ってたと思うのですが、桜吹雪がバンバン舞ってる間も入射光は健在で背景は真っ白く光り輝いています。つまり入射光は夏の日差しそのものではないということでして、さらに言うなら桜吹雪も季節が春であることの説明などではない。

…ごめん。眠い。また今度。