グレッグ・イーガン「順列都市」

イーガン邦訳の中では今のところ一番面白い。
順列都市って言っちまえば死後の世界(つまりフィクションの世界でもある)なんだけど、そこで行われてることの全て手順が決められてるのが楽しいわけ。あれを「無限に勘定できるんだから何だって可能だ」とやらずに厳密なルールにのっとって運営してるってのが実に美味しいところで、だからデザイナーにデザイン発注されて構築されてる死後の世界という宗教家が聴いたら目を回すような素敵シチュエーションが出てくるわけさ。そして死後の世界を構築するだけでは飽き足らずに創造主を気取ろうとしてサクッと足元掬われるところもラブリー。
そう、この「手順を守る」ってのが本作のキーワードだろう。そしてイーガンのキーワードでもある。イーガンは科学的説明だの疑似科学的アイディアだのを駆使するわけだけれども、その「科学的」とは「手順」に他ならない。そして「手順」を徹底的に追求することによって、イーガンは遂に「科学的な死後の世界」をも構築するに至る。科学とはまさに宗教的儀式に他ならないといわんばかりの暴走とそれをひっくり返すべく待ち受ける大どんでん返しに大笑いするのが正しい楽しみ方ではなかろうか。