森みさき「転生前は男だったので逆ハーレムはお断りしております」2~3巻(アーススターコミックス)

先日の感想書き直し。

やり取りのテンポが良すぎて何度も読み返した。

基本的になろうで内省的な語りってあんま良いと思ってない。ファンタジーであるなら心の内側より目の前に実在する虚構の存在や出来事について書くべきと思ってるので。

この世界がどういう世界なのかとか全然わからない。土地風土がわからなければ環境もわからないし社会制度も宗教もわからず、なので登場人物たちの行動が合理的なのかデタラメなのかもわからない、頭いいのか悪いのかもわからない、話がどこに向かおうとしてるのかもわからない、現時点で殆ど何もわからない。

なのに人間同士のやり取りだけで引き込まれる。舞台劇的な要素抽出で構成された人間関係、キャラクター単位への落とし込みがすごいよくて、定型化された様式の強さがこれでもかって発揮された感じ。

コミック作画担当者の他作品にも手出ししたが、4コマパロディの上手さがやり取りのテンポの良さに繋がってるんだろうなってのはわかった。それより以前の古い作品については断片的なものしか読めてないのでそれ以上は不明。基本的な構成は小説原作者に帰属するんだろうけど。

www.comic-earthstar.jp

おみおみ「ザコ姫さまは生きのびたい!」(ガンガンコミックスONLINE)

MMO系のゲーム世界のNPCお姫様に転生して処刑エンドを回避する話。ざっくり悪役令嬢のバリエーション。

絵がかわいい。

以上。

シナリオは話が進まないのでよくわからん。もはや悪役令嬢もので処刑の運命を回避とかたぶん誰も気にしてないが、悪役令嬢はゴージャスな衣装と美男美女が可愛かったらオッケーなので。

悪役もなにげに美形ばっか(中年のオッサンまで美形)、絵だけでええねん。

田中文「うっかり陛下の子を妊娠してしまいました」(ガンガンコミックスUP!)

なろうコミカライズ。

タイトルで既に強いっていうか、「なろう系タイトルどれだけ知ってるか・ホントに実在して売られてるかマウント対決クイズ」やろうと思ったら切り札の1枚になるよなというか。

タイトルに負けず劣らず内容も絶妙にキツいっていうか、絵がしっかりしてるので読めてしまうんだけど、ストーリーとしては本当にタイトル通りのことしか起こらない。なにせ、主人公であるヒロイン、基本的に妊娠、出産以外に目立って能動的な行動をなにもしないんすよ。政略結婚で第二妃として嫁ぐのも父親の指示によるものだし、宮廷入り後も目立たないよう過ごすし、妊娠したら当然ながら動かないし、出産したら子供のために動かないし、もう、ひたすら動かない。行動を起こさないことが政治的に適切な立ち居振る舞いだからという理屈で、周囲の状況をただ眺めるだけの話がコミックス全2巻のあいだずーっと続く。ハーレクインロマンスってヒロイン基本的に受動で何もしないって聞くけど、その系譜なのかな? ホントに今どき珍しいぐらい行動らしい行動を起こさない。

ただ我慢して、耐えて、じっとして、口を閉じて、外に出ず、が続く。

何が面白いの? ってなると思うんだけど、実際に面白いかどうかはかなり人を選ぶと思うんだけども、テーマ的には、ただひたすら呪うことなんだよね。

女性が財産と地位権力を相続することも一般的に認められてる地域から、女性の位置づけが子を産む道具、血統を守るためだけの機械としか見なされてない地域に嫁いできて、その何もできない状況に押し込められ続けることへのストレスをそのまま提示して呪詛としてる。政略結婚だし、愛はないけど、いちおうヤることはヤるし、それでいて愛はないから1回きりだし、その1回がドンピシャで当たるし、当たったことで周囲が勝手に思惑を張り巡らすし、妊娠は呪いだとつくづく思わされるのに、生まれた子供へは愛情を注ぐし、子供のためだけに人生をささげようってするし、そして心の内で決めた目標に対し提示される選択肢はひたすら「何もしないこと・じっと待つこと・沈黙を守ること」っていうね。

いったい何十年前のドラマですかって言いたくなるけど、一方で、現代のファンタジーなろう小説が溢れるなかに、これは混ざってた方がいいかなって気もするんですよね。

 

 

アリスとテレスのまぼろし工場

宮崎駿ゴーイングマイウェイを貫いて10年ぶりに新作「君たちはどう生きるか」を世に問うた。

岡田麿里ゴーイングマイウェイをいつもよりちょっと手を緩めて5年ぶりに新作「アリスとテレスのまぼろし工場」を世に問うた。

公開日のズレ、およそ2か月。

え。

それでココまで被るの!?

まずそこに驚愕するよね。20世紀最大のアニメーション作家の一人と言って差し支えない大巨匠の欲望だだ漏れの、遺書かと誰もが疑うような己の半生を振り返るかに見えるエゴエゴな作品を見た、そのわずか2か月後に、ほぼ同じと言って差し支えない鏡のオモテウラみたいなのを40代の作家がお出ししてきて、しかも結果的に駿の妄想連ねた内容を内側から食い破るかのような話になってんの。おまけの応援団に中島みゆきまで引っ提げてきて。

しかもさ、みんな「いつもの岡田マリー」とか言ってるけど、確かにいつものマリーだけど、割とバランス取ってるというか、マイルドに手控えてるよね。けっこう人目を気にしてるっていうか、アニメーション側のスタッフの力に託してるとこが多くて、ゴリゴリのマリーって感じではない。

つまり、そこまで我を見せたわけでもない、エゴ見せ度70%ぐらいのマリーが宮崎駿の業の凄み120%に拮抗して、何なら食ってるとこすらあると。強え。

しかし、こうして並べてお出しされてみると、なるほど岡田麿里宮崎駿と同じくファンタジー作家なのだなというのがよく分かる。駿はアニメーションの跳躍力で一気に飛び越すが、マリーは言葉の跳躍力で同様に一気に飛び越えていく。心情の細やかな変化を連続的に繊細に描写する人ではないんだよねマリー。澱みと跳躍の人。跳躍でなければ地面を一気に踏み抜く脚力というか。「下ネタ」「下品」という大してあたってない評価のせいか「リアリズム寄り」とか言ってる評を見かけたが、手掛けてきた作歴からも得意分野からも、いわゆるリアルからは程遠い作家だよね。

世評がおかしいと言えば、新海誠もほぼ関係ない。新海誠はそもそもアニメーションに全く興味ない作家で、たまたまデジタル技術で自分で出来ること、スポンサーから金を引っ張れることがアニメ映画というジャンルであっただけって人だし、しかも自分以外の他の人間に全く興味を持ってない。ドライなので宿業を背負うこともないし。アニメーション作家である宮崎駿とはまるで被らないし、人間を描くことを生業とする脚本家である岡田麿里とも比較にならない。

では岡田麿里はアニメーションとの相性はどうなのか。ファンタジー作家である時点で、アニメ作家寄りの人だと思う。アニメーションに対する理解や信頼もある。そこは業界で仕事を続けてきたキャリアゆえとは思う。ただスタッフがお出ししてきたレイアウトやアニメーションに対し、映像としてきちんと見極められるのか、については今後の修行待ちなんじゃないかなとは。蜃気楼をもじって神機狼、言葉の面白さ以外はあんまり説得力がないというか、まあ、それこそこっちは宮崎作品で伝説的アニメーターによる雲や爆発、煙の圧倒的な力強さを当たり前のように見続けて育ってきたので、「うーん、悪くはないけど、もう少しパワーやニュアンスが欲しいですね」となりがち。なお新海誠はそもそも煙の動きとか一切興味ない。「君の名は。」冒頭の隕石落下シーンで雲がピタッと止まったまま(昔のアニメ作家なら、この場面こそアニメーターの腕の見せ所と張り切っただろう)というのが新海誠という作家の既存の手描きアニメーションに対する興味のなさ、あるいはアニメーションに対する自身の態度表明の名刺代わりになっている。ポスト宮崎どころか、日本のアニメーションに一切興味ないんだよね新海誠。宣伝として有効活用はするだろうけど。

一方、ポスト宮崎とかいう何の意味も面白みもないレースをすっ飛ばして、ファンタジー作家としていきなり宮崎の隣に並び立ったマリー。これだけで面白すぎるので、ホントみんな見に行くといいと思います。

桃山ひなせ「エリスの聖杯」(ガンガンコミックスUP!)

なろうコミカライズ。

1巻めちゃくちゃ面白い。

続きを読んでくと話がとっ散らかって訳わからなくなる。1エピソードごとはまとまるんだけど、次から次へ新イベントと新キャラが発生し、話がどこに向かうのかよくわからなくなってくる。出てくるキャラはみんなキャラ立ちしてるし会話のやり取りも切れ味いいんだけど……。

なんとなくの想像だが、元から考えてたプロットをなろうテンプレ悪役令嬢の型で始めることにして、話を繋げるべく色々と工夫したものの、工夫が過ぎて遠回りになったんじゃないかなと。それをさらにコミカライズで丁寧に拾って描写に尺を取るので話の方向性が見えにくくなった感じ。詰め込みすぎなんだろうな。

悪役令嬢テンプレと書いたが捻りは何段も加えてあって、そこだけで面白い。悪役令嬢物は宮廷陰謀劇路線を切り開いてくれたんで、これいくらでも作れるなとあちこちつまみ食いしてるんだけども貴族様たちの悪意のぶつけ方がエグいの幾つもあってこれもそんな感じ。出てくる貴族の台詞は当然ながら怒鳴らず叫ばず、切れ味は鋭く、やらしい。なのだが、話の規模がデカいほうにシフトし物理的な暴力の領域になってくるとネチネチした貴族様の世界観が後退していってしまい、逆にちょっと物足りなくなるのが残念。

近刊までキャラは全員魅力的なままなので損はしない。損はしないが、もっとストーリー整理できたらもっと売れたのではと、微妙に惜しい。最新刊は近所の書店の店頭になかったんで通販で買うしかない様子……。

ミコケルは素直

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11x12連は編集者クロと同じくだが、ヌンノスかわい〜と念じてたらちゃんときてくれた素直でかわいい。

11x24=264枚引いて星5x7枚、トネリコの後半戦の4枚も300行かないうちに引いたので、明らかにトネリコ前半戦のほぼ天井だったとこから流れが反転してきてる。

去年末から今年前半もわりかしガチャ氷河期だったのがようやく、といったところ。プリコネ は特に天井まで引くこと多かった。水着ネネカ前後から流れが変わりはじめて、モルガンに縋り付くように踏ん張ったのを魔女様たちに認めてもらえたという感じかしら。