桃山ひなせ「エリスの聖杯」(ガンガンコミックスUP!)

なろうコミカライズ。

1巻めちゃくちゃ面白い。

続きを読んでくと話がとっ散らかって訳わからなくなる。1エピソードごとはまとまるんだけど、次から次へ新イベントと新キャラが発生し、話がどこに向かうのかよくわからなくなってくる。出てくるキャラはみんなキャラ立ちしてるし会話のやり取りも切れ味いいんだけど……。

なんとなくの想像だが、元から考えてたプロットをなろうテンプレ悪役令嬢の型で始めることにして、話を繋げるべく色々と工夫したものの、工夫が過ぎて遠回りになったんじゃないかなと。それをさらにコミカライズで丁寧に拾って描写に尺を取るので話の方向性が見えにくくなった感じ。詰め込みすぎなんだろうな。

悪役令嬢テンプレと書いたが捻りは何段も加えてあって、そこだけで面白い。悪役令嬢物は宮廷陰謀劇路線を切り開いてくれたんで、これいくらでも作れるなとあちこちつまみ食いしてるんだけども貴族様たちの悪意のぶつけ方がエグいの幾つもあってこれもそんな感じ。出てくる貴族の台詞は当然ながら怒鳴らず叫ばず、切れ味は鋭く、やらしい。なのだが、話の規模がデカいほうにシフトし物理的な暴力の領域になってくるとネチネチした貴族様の世界観が後退していってしまい、逆にちょっと物足りなくなるのが残念。

近刊までキャラは全員魅力的なままなので損はしない。損はしないが、もっとストーリー整理できたらもっと売れたのではと、微妙に惜しい。最新刊は近所の書店の店頭になかったんで通販で買うしかない様子……。