奥橋 睦「最果てのパラディン」

コミックス気がつくと出てるが相変わらず書店で微妙に探しにくいぐらいの並び。買い支えんといかん。

漫画家さん戦闘シーン書くの苦手なんだろうなーというのは割りと最初から読む人みんな思ってるだろう、一方で気づけばそのへんも克服せんとする迫力が絵から伝わってきて、しばしば説得力のある絵にうおすげーとなったりして、マンガは面白いなと。

実際、死者と生者の関係をアンデッドという存在を介して書くの難しい。マンガの中の生者はマンガである以上はキャラクターとして記号を取り混ぜて一定のコードで描かないといけない(そうしないと別のコマの同一人物を同一人物だと認識させることができない)。しかし、そこに損傷した肉体をうまく取り込むのは難しい。崩れて人間の形を失った顔なんてホントに難しい。顔は視覚から情報を取り込んで識別する際に真っ先に見出して、顔から逆算して人間の身体を見出し、人間とそれ以外の情報を見分けて全体を識別してくための礎石なので、そこが人間と人間以外が混ざってしまうのは基礎が曖昧でグラグラしてる状態。読みにくさを取り込んでしまうことになる。リアルな描写ならいいかというと、リアルさを求めて絵の情報量が多すぎても視認しにくく、逆に人間の顔や、手足のわかる形の人間の輪郭などを手がかりにしないと取っつきづらくなり本末転倒。人間の形をして動いてるのに人間でない、アンデットなる枠組みは誰がやっても絵にしづらく、ましてアンデットとの親しさと遠さ、生理的嫌悪感とそれを超える親愛を、ギャグにならず宗教性まで見据えて同時に描かなきゃいけない本作のような題材で、じゃあどんな大物漫画家なら上手く作れるのかと想像するに、誰がやっても面倒だなと。山岸凉子でならなんとか? けどファンタジーバトルまでこなすとなると怪物を質量あるように描かないといけないわけで…ギレルモ・デル・トロなら現代的な映像技術を使いこなしながら課題クリアできるかなあ。

ちょっとまとめようがない話になったが、マンガ面白いです