Angel Beats!エア評論或は世紀末オカルト学院

 僕はかつてビリーバーだった。という程度では今さらここの読者は驚きはしないだろう。だがまぁ、ビリーバーだった。どんぐらいビリーバーだったかというと、歴史の授業のディベートで、文明の発祥について「人類は第五惑星人によって進化させられたのだ」と、教師と同級生を相手に論争をしかけ一時間つぶしたぐらいにビリーバーだった。教師の当初の予定を狂わせて次の授業時までもつれこみ、教師が「第五惑星人が残した遺産がどうであったかは判りませんが…」と無理やり話を逸らしてうやむやのうちに議論を終わらせたぐらいにはビリーバーとして存分に振舞っていた。当時の僕は中学1年生で、1学期の歴史の授業はスタートした直後であった。中学受験で入った東京の学校ということもあって、中学デビューを狙って少し頑張ってしまった側面は否定できない。

 言うまでもなく、僕は浮いていた。それはしかし仕方ないことだと思っていた。彼らは真実もしらず教科書に書かれたことだけを丸暗記する受験勉強の被害者なのだ。そう思って彼らを哀れんでさえいた。だが、やはり言うまでもなく、僕は浅はかであった。

 それから2年以上の月日が過ぎた、とある日。ある男子生徒が、休憩時間に興奮して叫んだ。「知ってるか? 地球人は既に宇宙人と出会ってたんだ。ウンモ星人っていうんだぜ!」彼は幅広い交友関係をもつ、つまり、幅狭い交友関係に汲々としがみつく僕に劣等感を与える存在であった。彼はウンモ星人について語り続け、未知の宇宙人の存在は忌避される話題ではなくなっていた。

 僕は知った。「オカルト」にも、モテと非モテがあるのだ。ウンモ星人はモテだった。第五惑星人なんて、誰も知らないのだった。海外ネタはそれだけで信用に値するのだった。世界は平等でも公平でもない。

 オチはないです。