葛西臨海公園

 今さらだが凄いものをみた。当日は絶妙な曇り具合だった等いろいろ成立要件はあると思うので、他の人が行っても同じには見えないと思うが、いちおう書く。

 公園内のそれぞれの構築物が統一性なく配置され、しかもそれぞれ自己主張が強い。目立つ建物であるところの水族館ドームにしろ観覧車にしろ謎の宮殿風ホテルにしろ展望所にしろ、おそらく「未来」とやらをイメージしたであろう失敗したテーマパークもかくやの金のかけっぷり&アクの強さ。
 その構築物に対するはおよそ公園らしくない植樹センス。皇居前を思わせる堂々とした枝ぶりの黒松や、えらい元気のよさそうなシュロがやたら目立つように配置され、んで後ろにはフツーーーーの公園らしい手間のかかんない生け垣。
 自然環境を意識したっぽい鳥類園の野放しの「自然」状態。海辺の公園らしさを強調すべく用意された人工渚・砂浜。
 一方で渚以外の海辺を凄い勢いで全面コーティングすべくばら撒かれたテトラポットと、そのテトラのすぐ側まで寄れるように設計された遊歩道。
 園内の道を巡回する汽車を模した原色バリバリの遊覧乗り物。一方で突堤の突き出た水上バス発着場は実に硬いデザインで通勤客が利用するようにしか見えず、遊覧船が発着するとは思えない。

 近景だけでコレだが、目を遠くにやるとそこは東京湾。巨大観覧車から目を逸らすとポツネンと立つ風力発電に物流倉庫、そして言うまでも無く、葛西の海の対岸にはディズニーリゾート。海辺にこれみよがしに真新しさと場違いなリゾート感をかもし出す巨大リゾートホテルが乱立し、その奥にはシンデレラ城筆頭に巨大なアトラクションが見え隠れする。
 んで「人工の山岳」ビッグサンダーマウンテンの威容が、俺の遠近感にとどめをさす。公園内の人口渚や不自然さをかもす植樹バランスの近景がビッグサンダーの人工の山という遠景と交じり合って空間全体の人工の自然性を演出し、それが半端な管理で野放図に伸びた鳥類園の植物のまぎれもない「自然」や、テトラポットに打ち上げられた流木や魚の死骸と交じり合う。

 目に入るものすべて自己主張が強く、一方テーマパークの行き過ぎた人工的統一性も無く、視線のやり場を失いさまよった末に海辺の漂着物を眺めているうち、このいわく言い難い場を説明する言葉として「魔空空間」が思い浮かんだ。一種のブラックホール土星の輪の上でチャンバラ。