一方で、トミノ台詞は非常にエロゲ的でもある、といえます。
最近はだいぶ縛りがゆるくなって三人称も増えましたが、今のノベル物の基本は一人称です。主人公の目の前でストーリーが全部展開しないといけない。そうすると登場人物の独り言が増えます。(小声で)「何よ……こっちの気も知らないで……」「ん? 何か言ったか」「な、何も言ってないわよっ!」みたいな所謂ツンデレとか。ツンデレ的観点に立って見た場合、有名な
「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」
なんてのは実にツンデレっぽい。じゃあ、エロゲ台詞とトミノ台詞の何処が違うのか。
>「自分のために、自分自身に確かめるように喋る」
ここです。言ってる当人は発言を確認しない。むしろ自分がそれを言ったと認めない。「な、何も言ってないわよっ!」となる。
例えば、語尾や口癖の問題があります。かつてギャルゲーがコンシューマーで一世を風靡した頃、特殊な語尾をつけて喋るのが流行しました。短い発言でキャラクターを印象付けるための手法ですが、こうした特徴的な喋り方はKanonの「うぐぅ」やAIRの「が、がお」をほぼ最後として、ノベル形式が主流になるにつれ消えていった。
こうした特異な口癖というのは、誰に向けているわけでもなく、また自分自身は意識せず使用している。そして周囲の誰もがその特異性に気づかざるをえない。どこにも帰属しない音としてこうした口癖はある。同様のことが一人称に自分の名前を使用するのにも言えます。では、これに従って、
「シャアの若さゆえの過ちなんて、シャア認めたくないりゅん」
エロゲ的です。(正確にはギャルゲー的、ですが)
簡単に言えばエロゲのヒロインはバカが望ましい。バカじゃないにしても、自意識や自我が投影されない中立的・ストーリー進行優先的・世界観無視気味な発言をするのが望ましい。すなわち、
・エロゲキャラはみんな、ひとりごとを言っているのである。
ということなのです。