トラは

とらいあんぐるハート」が時代を先行してたってのはそもそも激亀仙人さまや更科修一郎さんみたいなエロゲーライターやってた組が言ってたことなんです。あのへんの二人は主に「家族」をモチーフにコミュニティの再構築を目指す、ていうあたりの話をしてたように記憶してます。
一方で「俺は家族ネタは嫌いだ」と事あるごとに叫ぶ高橋直樹さん(「月姫」「ひぐらし」で有名になったビジュアルノベル作成ツールNScripter作った人)みたいな古参エロゲーマー(つーかPCゲーマーだな)がいるわけですが、そのへん、俺が察するに「家族」て単語がクローズアップされるときには、裏ではPC系ゲームのプレイヤーの意識のパラダイムシフトが問題にされている、と考えられます。

すなわち。
攻略本なしで攻略したり改造プログラム作るのがカッコよかった旧世代。
イラストやSS書いて同人誌作ったりパロディに笑ったり現代オタク論をやってみたり、元ネタそのものを縦に攻究する路線じゃなく半分ずらして横に繋いでく連鎖がカッコいい現世代。
一本道のAVG・RPGと並列シナリオのノベルゲー、と言ってもいいですが。

そっから導き出されるエロゲーの主人公像は、求められたプレイヤー像の逆の像になります。
大雑把に、社会的束縛からの逸脱・自由を追い求めて女をとっかえひっかえするelfの親父ゲー主人公やアリスソフトの「ランス」が旧PCエロゲーをある意味代表してたのに対して、主人公が過剰に責任を求められて、最低でも結婚するのが義務、振った女の恨み言は甘んじて受けなければならず、のイマドキ。
どっちの主人公もわりかしスーパーマンぶりを発揮する、時代劇や特撮の「正義の味方」みたいなもんなんですが、つまるところイマドキは、性交渉した女性に対して責任とるていう(世間一般的には当り前のこととされる)レベルのことまで非現実的な強さを兼ね備えた「正義の味方」が要請されなきゃならない。「つよきす」の主人公の造形程度でも、かなり綱渡りですね。RPGやSLGのゲームバランスのデザインみたいに、どこを強くしてどこを弱くするか、みたいなバランス取りを主人公の言動の造形で行ってるのが現代のエロゲーシナリオです。