素人にはお勧めできないノベルエロゲー

「せっかく個人的エロゲブーム発生しかけだったのだけど。」

「ヌルいわ。がっかりだよ。」

「一気に疲れた。面倒くさくなった。」

等々。
http://d.hatena.ne.jp/rulia046
にて。
えーと、id:rulia046:20060314#c1142430547とかで余計なことを書いちゃったかなあと後悔してて、一応これでも素直に上位30位以内で尊敬してる*1先生に変なちょっかい出しちゃったなあ、しまったなあ、さあエロゲーシナリオってどう説明しようかなあ、と思ってたらナイスタイミングの記事が。

「面白ストーリーを観たい/読みたいだけなら映画だとか小説の方が圧倒的にコストパフォーマンスが良いじゃない」が持論の私。
http://d.hatena.ne.jp/kishiwadungeon/20060316#p2

そのとおり、と思うのです。終わり。



えーと。
ただ同意するだけでも面白くないんでエロゲーシナリオ話。
基本的には、普通の映画だとか小説のシナリオに慣れてる人がエロ目当てでもないのに直接ノベルタイプのエロゲーに入るのは厳しくて。というか無茶です。
エロじゃないゲームのシナリオだったら、ゲームていう要素が物語にどういうふうに影響を与えるかが割とダイレクトに見えるので比較的面白く感じられるんじゃないかと思われます。「ひぐらしのなく頃に」もエロなしだから良かったんで。そもそも「ひぐらし」はノベルエロゲーの文脈の作りでもって通常のエロゲーにおいて存在するエロの方向へ向かおうとする物語展開のベクトルを持たなかったからこそ安定した成功を収めたというのが僕の持論ですけど。
話を戻して、でまあ、RPGAVGサウンドノベルで「ゲームとしてのシナリオ」が映画や小説に対置されるに至って、そこから、そういった一般のゲームのストーリーテリングに対するオルタナティブとして展開してったと捉えたほうがエロゲーで発展(肥大化)してったシナリオの方向性は把握しやすい。てゆかこの5年間そういう方向性で整理して考えてたので。これをエロだオタク文化ロリコンだと関連要素をガンガン押し込んでいくと変数が多すぎて説明が困難になる。
んで。「萌えて泣けて複数の女の子とえっち出来るノベル系のゲーム」については、要するにドラクエ路線のシナリオに対する究極の彼岸としての「葉鍵」という奴で。成長しない努力しない救わない救われない報われない。挙句の果てに設定も展開も何もかも一つに収束しない。ないない尽くしが受けたんで。いや流石に途中でついていけなくて脱落してった人や反動で中途半端なところにしがみついた人も大勢いたから、そこまで極端じゃない作品もたくさんあるけど。
「ないない尽くし」の片鱗を味わいたかったら『雫』が短いし秀逸だからやってみても損はしないと思いますが、その先のONEKanonAIRの類は科学も論理もおっつかない人間関係オンリーのシナリオなんで絶対お勧めできない。つうかあんなもんが語られない世界こそが良い世界です。ぜったい。
いや実際、割と辛いのが、SFも推理小説エロゲーシナリオに向かないってことで、いわゆる一般的な小説好きの人の入り口としてのSFも推理小説もノベルエロゲーの窓口になりえない。まあ少なくともエロゲーの世界を漁るよりは文庫本買いあさってるほうがぜったい収穫が多い。どっちもエロゲーより一般向けゲームとの組み合わせのほうが親和性高いです。一般のゲームだとフツーに試練乗り越えたり成長したり真実発見したりするんで。*2エロゲーでSFだの推理だのやろうとするとゲームシナリオの系譜で消化されたSFやミステリーを踏まえたアンチゲームとしてのシナリオになっちゃうんで、真面目に作りこむほどに、謎が解けないアンチ推理小説、ポジティブの欠片もないアンチSFみたいなところに辿り着く。ぶっちゃけますと、僕あたりが「ひぐらし」はアンチミステリの親類だろうと見当つけたのは上記のような整理からミステリではありえないという判断が先行してたんで、中身の情報なんて見てないです。ノベルエロゲーの外見を模した以上ミステリは成立し得ない。だから推理は(少なくともシナリオ内での現在進行形の事件においては)絶対に成立しない。プレイヤーが直接触れない過去の連続殺人事件のほうは推理可能だろうとは思いますが、まあ「皆殺し編」やってないので外れてるかも。
そんな感じで。
あーあと、とりわけノベルタイプのゲームが主流になってからのノベルエロゲーライトノベルデビューできないぐらいの同人作家さんみたいのがたくさんなんだから、XP対応以降のノベルエロゲーは特にエロ目的じゃない人にはお勧めしないほうがいいと思います。この期に及んで今どきの作品でノベルエロゲー入門指南を作るほうが詐欺というかなんというか。漫画表現の拡張ていう話の流れで『白詰草話』を薦めるほうが遥かに良心的だし意味があるだろうと。
注記。
僕が信者の『水月』『さくらむすび』のシナリオライタートノイケダイスケは完全エロ特化型です。手段も目的も何もかも、描写の全てがエロに結びつく。
到達不可能性→だからこそえっちしたい。
論理不確定性→だからこそえっちしたい。
誰ですか描写がえぐいとか単語セレクトが変とか言ってる人は。

*1:主に五角形顔のひとつの極致の達成者として

*2:「エロシーンを抜いたノベルエロゲー」としての恋愛ものノベルゲームは別。KIDのそれの一部はエロゲーすら踏み越えて「ないない尽くし」の極致に辿り着いてます。ある意味でKeyのソレより先まで突っ走ってる。