春萌 その2

ネギ娘中。
萌え系、という単語を何度か見かけたことがある。これまで、萌える、てのは消費者に依存するものだと思っていて、萌え系などという分類は成立しないだろうと思っていたのだが、ちょっと考えを改めた。「萌」の字を冠しながら萌えるという単語からちょっと離れたところにある本作を見ていて、確かに「萌え系」と「萌え系でないもの」があるのかもしれない、と思ったのだった。
個人的に、昔のエロゲーは基本的に萌えない。そして、昔のエロゲーを思い出す。女の子たちの立ち居振る舞いがPC88時代にプレイしたナンパゲーの感覚に近い。画面に裸も下着も出ていなくても、テキストでの下ネタがさほど卑猥でなくても、総合的な雰囲気として純然とエロ展開を目当てにした古典的なエロゲーをプレイしている気分になる。
一見すると饒舌に見えるテキストだが良くも悪くも昨今の特長である過剰さがなく、非常にシンプルで淡白で、女の子に欲望が注ぎ込まれている感じがしない。あえて言えば、町ですれ違う普通の女の子のようですらある。ごく当り前に風景の一部に収まって、とりたてて主張しない。多分、情報の多くがヒロインへの修飾語ではないのだろう。かといって劇的な物語が進行する気配も今のところ見えない。
そんな感じで、ヒロインたちがあからさまな売春婦のように扱われていない一方で、プレイヤーとしてはシナリオ進行の選択肢は三人のヒロインのルートのうち一つを明示的な三択で選ばなければいけないようになっている。エロゲーだとわかって買ってプレイしているのだから、先に進めばエロシーンないしそれに準じるものが来るだろうという予想もある。そのあたりが、町を歩いてる女の子をナンパする、というイメージに繋がったのだと思う。
エロを主張しない女の子をエロ目当てで追いかけるというプレイスタイルを自覚せざるを得ない、「萌えゲーでなくエロゲー」という手触り。
タイトルや舞台に冠せられた萌の字へのこだわりがなにやら意味深げに思えてくる。