『ローズ・イン・タイドランド』

テリー・ギリアムの新作。こないだの「ブラザーズ・グリム」で上と編集方針で揉めて交渉が一時期決裂してる最中にサクッと撮った低予算少人数映画だそうで、グリム兄弟のほうがイロイロと大人の事情に屈服して「ハリウッドにやっつけられちゃったギリアム」みたいなニントモカントモな中途半端感あふれる作りだったのに対し、こっちは憂さ晴らしのためか「ああ、いつものギリアムだ」と安心の作りでした。
原作は少女の一人称小説で、上の邦題のとおり「不思議の国のアリス」をモチーフに採用しています。ローズは少女の名前ね。
アリスをモチーフにして幼い少女の視線から見た世界を描いて変な光景になっちゃった、は最早お約束ですが。ヤン・シュヴァンクマイエル『アリス』を思い出しましたが、えーと当然ながら別物ですんで俺が勝手に並べたって話。シュヴァンクマイエルのアリスは中盤で既にアリス自身ですら解体されてコマ撮りアニメーションの素材として剥製や食物や釘やなんやかの非生物と全く同列に扱われてて、人間バラすのが常套手段なんじゃねえか、みたいなシュールレアリスムのアニメーション作家とはいえそーゆー文脈と関係なく作家の病んでるとこが剥き出しだったんですが、タイドランドのローズはそーゆー目にはあいません。シュヴァンクマイエルつながりで言うと「オテサーネク」の少女に近い。まあ結局は少女の心象風景を機軸に組み立てた世界観でもって「醜い」「目を背けたい」ような代物を「再解釈」して魅力的な道具立てや個性的な登場人物に仕立て上げる、ていう。
えー、こーゆーの良く知ってますよね。少女漫画テイストな少女達のリリカルな心象風景、それにダイレクトに連結する形で提示されるテロや暗殺や政府の名による人体実験。はい、みんな大好き『GUNSLINGER GIRL』、の、この場合は1〜3巻あたりの序盤になるんかな? 前の巻なんかもううろ覚えだけれども。
ガンスリのことをネットとかで語る人たちは、漫画の話をしてるってのに絵の変化と内容の変化を連動させて語ることを全くやらないのは何でなんでしょうね。単に絵下手だと思ってんですかね。こっちは絵につられて買ったってのに。ヘンリエッタのほっぺたを「むにっ」とつまんだ時からはじまる、少女達が実体ある肉体を獲得していく過程を取り上げるべきだろう。それはつまり、何で新キャラのペトラが「身体を動かすのが好き」なキャラクターとして出てくるのか、て話でもあるでしょう。思いつきで自分で作った概念を当てはめる前にさ、もうちょっと考えることあるだろう、と。
CG加工だか何だか技術のことは知らないけれども、写真のように「リアル」な背景や小道具が(その先にある奇妙に「リアル」なテロや暗殺や人体実験が)、それそのままで少女漫画から抜け出てきたような夢みる少女の世界観において肯定される、こーゆーのを例えばシュールレアリスムの手法として評価してやるのって、そんなに変かね? ガンスリを徹底的に拒絶する人たちがシュヴァンクマイエルやギリアムの映像も「キモイ」の一言で切り捨ててくれるんなら、まあ納得もするんだけど。
脱線した。
えー。
ローズは美人ですね。かわいいし魅力的だし。演出としてちゃんとセクシーです。他に言うことありません。
あ、そいや「世界の終わり」とか台詞で言ってたな。ギリアムつかまえても世界系て言うんですかね。いいけど別に。