『ヒトラー 〜最期の12日間〜』

今更のように、拡大公開が終わる直前に駆け込み。川崎では今週16日まででラスト。
パンフにも書いてるように、「ヒトラーの映画」じゃないです。
とても反応に困る話でした。他人様の感想を引用するところから話を起こしたい。

最後にくどくもう一回、ベタベタにわかりやすい言葉を貼り付けて締める。本編であれだけ力強い演出のかぎりを尽くしても、それでもまだ不安なんだろうな。
http://d.hatena.ne.jp/ityou/20050819

で。引用リンクしといて足蹴にするような話なんだけれども、くどくど言われなかったらヤバかったと感じたのでした。少なくとも私にとっては。
パンフにも書かれてるようにメインは防空壕を舞台にした密室劇で、そこに対比されるように密室の外のカットが入るけど、どうにもユルさを感じる作りで、対比が強烈に作用しているとは言い切れない。つか、これは監督の資質の問題かな? ベルリン市街を防衛線のために駆けずり回る少年の視点はオチのための出来レースに見えさえもする。ラストの少年と秘書のツーショットは大河ドラマの「そして全てが終わり平和が訪れた」で強引に締める最終回並だ。*1
そして困ったことに、メインとなる防空壕の「死と没落の三文美学」(パンフの解説)はかなり魅力的だったりする。

つまり、デカダンだ。
そしてそれはとても贅沢なことなのだ。
http://d.hatena.ne.jp/abogard/20050819

ある意味で贅沢の極みでした。おそらく、ファンタジーという言葉が最も似合う。貧困な想像力しか持ち得ない小市民にとって、あまりにも身近すぎるファンタジー

第三帝国における「政治の美学化」(ベンヤミン)が、実は小市民の誇大妄想という、ロマン主義の最終形態であることを明らかにしながら、この映画は終わる。
(パンフレット解説)

ヒトラーを知らないで見に行く人間は流石にいないと思うけど、これもやっぱりパンフに書かれてるように、ナチスドイツというイメージの強さと相殺されてようやくペイする話なんで、最期のドキュメンタリーからの引用は多分必須。不必要と思えるだけの健全な精神の持ち主のみ個人の好みで脳内カットすればいいんでないかと。
いや、コレをキッパリと「ヒトラーの人間的側面が描かれて云々」て言える「健全さ」って、この場合はけして不必要なんかじゃないですよ。

*1:念頭にあるのは「太平記」。