インフィニット・ストラトス 1〜4話

「学園もの」は日本のオタク文化圏において「ロボットもの」「魔法少女もの」などと同じジャンル名で、つまり「学園」は「ロボット」や「魔法少女」と同じラインで語られる。ロボットのデザインが変遷するように学園のデザインも変遷するし、魔法少女の概念が細分化し幾重にも積み重なって複雑な文脈を形成するように、学園の概念もまた複雑な文脈を形成する。

 銀河美少年が軸足を置いているのがあくまで「ロボット」の側であるのに対し、ISは「学園」に軸足を置く。昨今はデジタル作画の普及で学園風景の近未来化的な装飾が流行しているが、ISの世界観はそうした近未来的学園風景に根ざすことで成立しており、ISというパワードスーツもまた学園を彩る素材としてある。ロボのトゲや角や必殺武器、魔法少女の変身グッズと似たような位置づけだと考えれば理解しやすいかもしれない。90年代の機械化学園ものでは、学園そのものが宇宙ステーションや軌道エレベーターだった。現代の学園は、校舎などの外見は一般的な学園に準じた建築物でありつつ、生徒の身体に近未来機械を貼り付ける。これはおそらく、制服というより校舎に近しい意味合いでの学園の一部だ。

 こうして見た場合、学園内で男子生徒が主人公一人である理由も見えてくる。今どき男女共学の学園だろうと主人公一人がモテハーレムを形成するのが当たり前なので、ハーレム形成が目的だと断ずるのは誤りだ。むしろ恋愛を主軸としないためにベタ惚れファースト幼なじみ、ベタ惚れお嬢様、ベタ惚れセカンド幼なじみなどベタ惚れを最初から打ち出し、女性多数男性一人の特異性をカムフラージュしていると考えられる。重要なのはISの装着が基本として女性と対でなければならない、つまりパワードスーツをただの軍服や制服にしないための「装着者の身体的なか弱さ/装備の強力さ」の対比の強調を狙っていることであり、そしてまた、ISが単なるファッションに堕し単なる百合カップルものにならないよう、「力」を指向するエッセンスとして男性主人公が用意される。しかしその「力」は大前提として去勢されている。ISが学園の拡張である以上、学園ものの範囲でしか、ISの能力は必要とされない。

およそ全てが学園のために組織されているという意味で、ISはユートピア的なディストピアだ。ISに乗るために暗記させられる教本の絶望的な分厚さだけが、夢から目を覚ませと語りかけているのである。