高須賀由枝『グッドモーニング・コール』RMC

正直に言って、古本屋で入手した後ずっと積みっぱなしでした。高須賀由枝は「恋も二度目なら」が期待してたよりピンとこなくて、あまり気にしていなかった。
やられた、というか、今までずっと見落としていたこと、リアルタイムで読んでいなかったことを後悔することしきりです。
 
おそらく断言できるけれども、2000年前後、ホームベース顔の絵柄の最良のところを本作が受け持っていたのだと思われます。とりわけ1〜3巻の頃の角度は神の領域と言うべきでしょう。そうであるがゆえに、ホームベースの超絶的な角度の緊張感に作品強度が耐え切れず、息抜きとしてデフォルメ顔の頻度が上昇せざるをえなかった。それほどまでに完璧。や、完璧という言葉は似つかわしくない。ひとつ間違えたら崩れ去ってしまう、恐るべきバランス感覚によってのみ成し遂げられうる余計なものの一つとしてないシンプルな美を前にして、僕たちはのたうち転げまわることしかできない。たとえばあのアバウトに放り込んだだけに見える楕円状の口とホームベースの頬の角の間の特異な空白から生み出されるエネルギーポテンシャルを説明できる言葉は、おそらく現在の漫画評論には存在しない。聞くところによると、現在の高須賀作品はデフォルメ頻度が上がりすぎているとのこと。ホームベース顔の持つ決定力と支配力の強烈さは計り知れないものがあります。
それにしても、高須賀由枝愛媛県在住作家さんであったとは。至高の角度、それは愛媛県松山市在住の少女漫画家だけが生み出しうる無形の世界遺産なのでしょうか。