古川奈春「勘違いの工房主」アルファポリスコミックス

弱そうに見えるショタ美少年が万能なジャンル。

原作1巻相当の部分だけ見ると主要キャラが全員まったく自律的に動く動因がなく、特に説明のないまま黒幕的に暗躍するエージェントが状況を全部お膳立てしてくれることで無理やり話が進むというだいぶ微妙なストーリー。万能ショタは基本的に受け身、周囲の女性たちもショタに出会ってベタ惚れするまでは目的が特にない受け身の位置付けなので話を進めようがなく、便利エージェントにおんぶに抱っこで進行させてくしかなかったと思われる。

ただ、そうやって強引にくっつけてしまいさえすれば、キャラ同士の好き好き大好きだけでほぼ話が進むうえに受け身の人格はトゲがないので、とても楽しい。

特筆すべきはページあたりの密度の濃さ。テキスト量かなり多めに突っ込んでいるうえに、キャラクターたちの表情変化が目まぐるしく、同一コマ内でも台詞と表情の組み合わせも相反するものをかなり頻繁に衝突させてくるので読むのにかなり時間がかかる。読み返してても、今どきらしく大きめのコマ割りで細部も大胆に省略して顔アップ多めなのに、なんでここまで密度あるように感じるんだろう? と不思議にすら思う。4コマ系の起承転結の多さに由来する感じだろうかと。

で、ショタの常軌を逸した万能ぶりとそれに振り回される周囲のリアクション芸が内容の殆どなんだけど、コミュニケーションの落差を余すとこなくフルに使いきってるので、めっさ面白いです。原作2巻目相当に突入するとショタにも能動的に動く動因が用意されるので強引さも目立たなくなり、クルクルと変化する表情を追っかける楽しさに存分に身を任せられるようになります。

全キャラ可愛いけど、たぶん主人公的な位置付けにあるユーリさんが兎にも角にもやたら可愛い。

 

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