「HK 変態仮面」ネタバレあり

素晴らしい。
ちょっと舐めてかかってたのですが予想外に素晴らしかった。
基本的に低予算映画です。深夜ドラマに毛が生えたぐらいのライン。ただし要所はしっかりと押さえてるので大スクリーンで見てもしょぼくない。要所=主に変態仮面および敵の身体。ちょうセクシー。ちょうカッコいい。
なんつーか「成功した劇場版るろうに剣心」ていう説明がしっくりきます。いやホントにやってることは結構近いんですよ。役者の体当たりなバトルが売りで、そこにショボイCGをぺたぺた貼って、敵の親玉がすごく脱力系で言い訳がましい感じにショボくて、ストーリーは漫画原作の要素を割と無理に詰め込んで端折りまくってるのでプロットに沿って粗筋を述べてるだけの代物で、といった。細かい部分はさておき、大まかな道具立てについては、邦画だからコレで勘弁してよね、みたいな小物感に最初から引きこもってる感じがなくもない。
けど、るろ剣がダメだった僕が全然おけーだったんですよ変態仮面
 
何が良かったか。
仮面ライダー文脈とか忘れてアメコミ映画文脈で見るのが妥当です。そうするとまずクリアされるのが変態仮面のコスチューム。変態連呼してますが、アメコミのピッチリタイツマッチョと比較して、変態仮面の露出度は少し多いぐらいであって、並べてしまえばそこまで変態な恰好ではない。逆に肌露出が多いのが好感触に思えてきます。
てのは、最近のアメコミ映画化ってさ、マッチョタイツ姿を嫌がるんですよね。理屈をいろいろくっつけて、日本のスーツ物ヒーローと同じ以上に鎧姿にビッチリ身を隠しててさ。近作のバットマンなんかがその代表ですけど肉体勝負じゃない。武器使わないで自分の身体で勝負だぜと言いつつ肉体を隠しちゃう。けど、アメコミつったら、やっぱマッチョが大きな売りだったはずなんですよ。ピッチリしたスーツに身を包んでるのがバタくさくてアメリカンな方向にカッコよかったはずでさ。だのにアメコミ映画ときたら、役者の鍛え上げた肉体をみせるぜてのは普通のアクション映画に譲っちゃってCGの派手な絵やフィギュアコレクター好みな細かい造形ばっかで。ヒーローのヒーローらしさ、画面内のヒーローとしての存在感が希薄になっちゃってる部分が無きにしも非ず、だったんですよね。
 
変態仮面は、そういう映画化されまくってるアメコミヒーローたちの隙間を見事に突いてくれた。
極限まで露出した肉体美で勝負。しかもマンガ原作を再現するため、要所要所でビシッと胴体を前に押し出した止めポーズを強調。もしかしたらCG加工してるかも、ってぐらいに身体が引き締まってるから文句なしでカッコいいの。変態じゃないのよ全く。むしろスローモーションと早回しばっかでいい加減どれも同じに見えてきたアクションムービー業界に殴り込みをかけるニュースタンダード。腕や足じゃなくて胴体をガツンと前に出したアクション(とはちょっと違うけど)ですよ。すごいよこれ。

さらに最大の敵となる偽変態仮面が凄い。
役者もすごいんだけどさ、亀甲縛りで猫背姿でオーラまとってるの見たとき「リニューアル後のエヴァンゲリオンだ!」って。生身姿でウルトラマンやっちゃうのじゃないよ。宴会芸みたいなもんだけど、確かにエヴァ初号機が暴走してる姿が被って見えるんですよ。
しかもヒーローの偽物っていうとさ、視聴者には一発で判る「微妙に違う感」があるじゃないですか。目が吊り上ってるとか黒が多いとかトゲトゲがついてるとか。
そうじゃないの。
違うの。
これは作中最大の凄いとこだから、見に行く人は読まないでほしいんだけど、
 

あのね、


 
毛が生えてる

んですよ。偽バージョンは!!

すごい。その差がすごい。原作よく覚えてないんだけど、偽変態仮面って原作でもこうなの?
いやでも説得力が絶大でしょう。正義の味方は無駄毛がない。偽物は毛が生えてる。この手があったか!って。生の身体で勝負かけてるから出来る。日本産アメコミ風味ヒーローとしては過去最高のヒーローになるんじゃないでしょうか。

是非に、上記のポイントを順守しつつ、ハリウッド50億円大作ぐらいにリメイクすべきです。ヒーロー物が変わるから。