『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』

別段に何の期待もせずに見に行った。
言うまでもないですが、かなり微妙な出来なので、基本的に見に行かなくていいし、無視していいと思います。目新しい要素や特筆すべきポイントは特にないです。普通に凡庸でシナリオもまとまらず、素材がとっ散らかってて、テーマとか掘り下げとかそういうのは一切ないですね。
最初から期待してなかったんですが、かなり残念だったのが、監督か脚本かプロデューサーか知りませんが、作り手のヒーローに対する愛情が皆無な感じ。特撮技術がヘボでヒーロー愛だけでヒーロー物を作ってる日本のヒーロー業界というのを知ってるだけに、アメリカさんのビジネスライクな作り方の空振りバージョンはあまりいただけないです。いやさ「変態仮面」が素晴らしかったんですよほんと。SMマスクでお茶を濁すぐらいならパンティを被ってほしかった。そのへんに象徴されるんだけど、マスクドヒーローに対し、醒めた目でショボさを強調して笑いを取りに行くシークエンスが多々あるんですけど、ショボさが中途半端でどっちつかずなんで、わかってる人間同士のヘラヘラ笑いを取りに行くという感じでした。2作目だからこんな感じで、というオーダー通りにやっつけてる感じ。そういう大人の事情が透けて見えるのは仕方ないとは思うものの、例えばバートン版のバットマンシリーズを受け継いだ上で「俺にとってのマスクドヒーローへの愛情とはゲイ的な目線でのバットマンとロビンの尻のアップに尽きる!」と言い切った「バットマン&ロビン」の潔さが逆照射されて再評価したくなりました。そういうのでいいと思う。愛がないで、かといって職人としてキッチリ仕上げるでもなく、やっつけてくるよりは。
一応、他のレビューで取り上げられるかもしれない要素について言及しておくと、今回、キックアスは蚊帳の外です。実父を殺されたりしますが肉親を殺されることを巡っての怒りも悲しみも懊悩も狂気も何にも映画的に演出しようみたいのは一切なくて、お父さん殺され損としか言いようがないぐらいに軽い扱いでした。んでヒットガールが主役ですが、キャラの掘り下げは「ティーンエイジャーの取扱いマニュアル通り」って感じで、前作のヒットガールとの連続性すら見えない感じでした。いや前作から受け継いだらナチュラルボーンキラーみたいにしかならないんで改変したんでしょうけど。んでヒットガールにぶつけるために用意されたキャラがロシアの筋肉ムキムキのおばちゃんですが、「女の敵は女」みたいな考え方で用意したのだと思うんですけど単にBBAです。いや本当だったらば、ヒットガールの鏡を用意するなら悪の側に彼女より幼い少女兵士を用意するのが作劇的なセオリーとしては普通なんですよ(ガンスリンガーガールで敵に少年テロリストを配置してましたよね)。まあ大人の事情でダメなんでしょうけど、大人の事情なんて企画段階で判ってるんだから、じゃあヒットガールを主人公に配置しちゃだめだよね、っていう。ビッグダディのマスクとスーツ、アマデウスの仮面のような印象を与えるカメラワークだったけどビッグダディの呪い、父親による抑圧との対決ってわけでもないのよね。むしろ父親のいうことをよく聞きなさい、的な。シナリオマニュアルに従って心理学的なアプローチのカット割りやシーンだけ用意して、撮っちゃったから使っちゃえぐらいの扱いでした。
褒めるところは特にないです。