「さくらむすび」から抜粋 その1

「うん。私小説的で、不安定だ。書いた人間の不安定さがにじみ出ているようで、気持ちが悪い…というより落ち着かないな。逆に、そういう芝居とも取れるけど」
「う、うーん。よくわかんないけど、私の代の先輩たちって、みんな普通だったよ」
「ああ、別に否定的な意味ばかりで言っているわけでもないんだ、不安定っていうのはさ。誰にでも不安定な部分はある。ただ、恐らく誰しもが持っている不安定な部分を突いている気がするんだ、これは。わかっていてやっているなら人が悪い。天然ならタチが悪い」