アラブの春から眺めるグランブルーファンタジー騒動 その4

その1 http://d.hatena.ne.jp/tdaidouji/20160225#p1

その2 http://d.hatena.ne.jp/tdaidouji/20160226#p1

その3 http://d.hatena.ne.jp/tdaidouji/20160229#p1
 
からの続きです。
 
 ・金を使わせない仕組みを発展させてきたグランブルーファンタジー
長々と書きましたが、グランブルーファンタジーにおいては、外からの見た目はガチャに無制限に課金してナンボのゲームだが、それをゲームシステムやアイテム配布の運営によって課金を抑制する形になっている、といえる。
これは、「ブラウザゲームなのに金がかからない」と形容されがちな艦これが、実際にコレクションするには所持数枠を拡大しないといけなかったり、ケッコンという課金要素でそれなりに戦力が向上するために、そこそこやりこむには実質的にそれなりの額の課金が前提となっている*1のと、きれいに対比できる。

 ※「課金しなくても楽しめる」と言われつつ、そこそこやりこむには確実に一定額の課金を必要とする「艦これ」
 ※「ガチャで搾取」と言われつつ、数十万円程度のガチャ課金では、無課金のやりこみユーザーに負ける「グラブル

 
双方をプレイした上での感想としては、「先に払うか、後に払うか」の差でしかない。
ある種の問題を、外からルールを押し付けるのではなく、ゲームシステム上でユーザーを誘導する形で解決する、見方によってはグラブルの形のほうが、ゲームとしては丁寧な作りであるとも言える。もちろん、そう理想通りに行くわけもなく、何かあるたびユーザーからの不満が噴出するわけで、今回のそれも難しいかじ取りをミスって失敗してしまった例となるでしょう。
 
 ・「基本無料」前提の戦い
「基本無料」という間口の広さ(広告効果)が前提のサービス仕様が全世界的に広まっている以上、「定額サービス前提の仕組み」では成り立たないのは確かです。*2
である以上、「払える人には払ってもらう」仕組みで集金していく仕組みは必須です。
グランブルーファンタジーの場合、その仕組みがゲーム攻略からある程度分離され、「可愛い絵柄に課金する」という動機が優先する体裁になった。
 
 ・プレイしないとわからない、という壁
そうした「外からの見た目が悪い」のが、グランブルーファンタジーの最大の問題点といえる。
ゲームというのは、元から「プレイしないと判らない」ものです。「実は金がそんなにかからない」「チャラチャラした見かけの割に複雑な内容で様々な判断が求められる」という内実の仕組みはプレイヤーだけが共有していて、外から見ると「ガチャ」だけが見える。
 
映画よりも漫画よりも「実際に触れてみないとわからない」のがゲームです。
 
あえていえば、「触ってもらえばわかる」というユーザーとの関係に甘えて、対外的な説明がおろそかだったのが、企業努力の足りなかった点とは言える。
言葉一つとっても、課金の部分に「ガチャ」という言葉を残していること自体の印象の悪さは言えるでしょう。同じ仕組みであっても「ガチャ」と書いてなければ、随分と違って見えたかもしれません。そのあたり、グラブルの運営側の言語センスの悪さが問題を大きくしたとも。*3
 
しかし今回、ユーザーから不満が出る形になったではないか、という反論が出てくるでしょう。
そろそろ、その話に。
 
 ・では結局、ユーザーは「錯誤」したのか
まず、おそらく、今回の騒動の元となったガチャですが、対象の確率が低く入手が困難なのをある程度了承した上で大枚を払った(自分が課金したいと思った額だけ課金した)人のほうが多いのではないか。
傍証として、実際に使用済み額相当のゲーム内アイテムが「返金」された際に、「数十万円を投じても駄目だった」と騒いでいるとされる人以外の、かなり多くの「数十万を投じたが騒いでいない人」が続々と出てきた例があげられます。
かの人たちは、特に文句もなく黙々と支払っていました。
支払う側が納得づくなのだとすると、それを指して「確率を錯誤した」と言えるのか。
 
もちろん「取引のどこからが詐欺と呼べるのか」の線引きは常にあいまいです。例えばマルチ商法は法律で禁じられているものの、取引現場において一般商取引との区別をつけるのは難しいし、霊感商法などの多くも同様。
 
ただし、どこぞの煽り屋も「結局、騙した騙されたは主観の問題」と言い募るように、主観の話であるのなら、主観的には騙されていない人が多数であるなら、錯誤は発生していない、となる。
 
とまあ、こういうことを述べても、納得いかないでしょうから、もう少し突っ込んでみます。
 
続きます。

*1:艦これの月例ランキングなんか、現状は完全に金と時間の投入合戦です。

*2:コンシューマーのパッケージゲームも対価を先に支払う仕組みであるがゆえに「基本無料」の仕組みに対抗するのは難しく、広告費が払えるだけの大手か、知名度が期待できるシリーズ物、基本無料のサービスで一定以上の評価を得てからの参入組などしか、なかなか生き残れそうにない

*3:文系スタッフいないだろ、ぐらいの国語力のなさはたびたび言われており、不満の拡大する遠因でもあった。