勇者と魔王の枠組みをもう維持できなくなってるのね

 そもそも、現実と接点を持たないファンタジー異世界で大冒険という形式からして、スレイヤーズだろうがロードス島戦記だろうが「作家の頭の中だけで作った俺様スゲーな設定を順番に消化していくのをカタルシスとする」ものなので、その事実から目を逸らそうとするならグインみたく無限に終わらせません、ぐらいに、相当に無茶な路線を突っ走るしかないと思うのだけども。
(もしくは現実世界との接点を強引にでも作っちゃうか)

 今回のについては、一見すると、そういうファンタジー世界を維持するためのお約束を解体する、意地悪な露悪視点の採用、にみえる。が、露悪視点そのものを隠さない露悪、とゆー視点もあって。つまり、固有名詞をつけてない状態で、「教科書に出てくるような西欧世界の変化の象徴」みたいなアイテムを、そのままの名前、そのままの変化の効用まるごとで出す。で、そのアイテムが現実世界と同様の効果を発揮できるようお膳立てをする準備のくだりが膨らんで、そちらがまるで本筋のようになった、というのが全体の構図だ。

 馬鈴薯は新大陸発見、羅針盤大航海時代活版印刷を使った宗教改革等々、そのへんは、「魔王様のパワアをみせつけてやる」アイテムというより、魔王が話の中で活躍しないのと同様、たぶん、用意されたシチュエーションにすぎない。魔王が直接出て行って何かやっちゃうと話が破綻するから、それを避け続けたらこうなった、という話だと思うんだけども。

 前提にあるのはあくまでドラクエの最終決戦直前のシチュからどうやって魔王と勇者をラブラブにするか、というお題の達成なので、別に、近代世界・近代知識人に進歩進化させましたというのが話の決着ポイントではない。

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 ところで、検索というのはワードで真ん中のところだけを引っ張ってきちゃうため、その周辺事情がみえなくなりがちである。同じ話をしながら別の方向性に派生している人たちの声というのは、出てこない。結果、「議論」がまるで一方向にのみ続いているように見えてしまい、中にいる人たちからは、結局、その「議論」の枠組みの客観的な位置づけは見えないままになってしまうのだが、

http://d.hatena.ne.jp/imaki/20100516#p1

も、見事にそのトラップに嵌っちゃったなーと思う。他人の作業にケチつけてお前はナニやってんだとゆー話でもあるので、何か考えます。