四畳半神話大系

 ふつー。ことさらでなく。

 いやなんかな。こういうのを指してギャルゲーでどうこう、という門外漢の人たちがいるということなので、いちおう。

 なんというか、たぶん、この本を読んでいる人が面白がるであろう部分というのの、まったく逆を目指していたのが、彼らの想定するギャルゲーっぽくシナリオが枝分かれしてどーこー、というものだった気がする。

「痕」を後に例のえらく変わってしまった水無月絵でリニューアルしてしまった際、なんでかシナリオ全体が循環構造っぽくなってしまいました、という話をして誰がどれだけついていけるかなのだが。

 えーつまり、「痕」がそうなっちゃったという事に対し、昔の「痕」しか知らないフツーの葉っ派さんOBは「えええ? そうなの?」と反応する。彼らは別に、お話全体としてのまとまりなんかに欲情していたわけではないからだ。どっちかつーと「人はそれぞれ心の中に己だけの四姉妹を抱えている」などと二次創作に精を出し、四姉妹モノのエロ漫画・二次元ポルノがジャンルとして定着したりしていたはずだ。

 あけすけに言ってしまうなら、明石さん一人にヒロインを固定できるんであれば、誰も「運命の相手が複数いるという事実に素直に驚嘆する」などという女の子をたくさんつまみぐいする言い訳をそこまで美しく着飾らんでも、なあたりでグルグルと経巡ってクネクネと文章をこねくりまわしたりはしない。

 逆に言えば、何人もの女性が全員イーブンにメインヒロインとして居座ってるというとこさえ無視して「メインヒロインはこの娘、ほかはサブ」「つか、ヒロイン一人だけでいいし」とゆーあたりで割り切ってしまえば、エロゲーがどうとか、ギャルゲーがどうとか、そんなもん、どうとでもなるのであり、「四畳半神話大系」を指してギャルゲーとの関連を指摘しようとするなら、本作はギャルゲーにおける最大の問題から目を逸らして逃げ出したのだ、としか言えないのである。そんなどうでもいい「問題」なぞをことさらに取り上げてギャアギャア騒ぐほうがバカだが。

 かつてエロゲのパッケージからメインヒロインを推定するとかやってる不毛な人たちがいたが、「シナリオ/物語としてメインヒロインがいなければならない」という枠組みを当てはめることに無駄な労力を費やしたいなら清水マリコのノベライズでも読んでオナってりゃいいのである。