TV ANIMATION To Heart Vol.1(KSS) より

 部屋を片付けて出てきた。監督インタビューを読むたび泣くので抜書きしとこうと思った。

>実は、浩之を主人公で、という案は、最初にアクアプラスさんの方からありました。でも、それじゃ作れないということを話しました。出しゃばらないで、必要な時だけ出ていくというヤツを主人公に据えてしまうと、本当に都合のいいヤツになってしまう。それは、作劇上不可能ですということをお話ししたんですね。

>――川澄さんは、最後にキスシーンがあると聞いていたのに、なかったので「あれ?」と思ったらしいですけど。
>最初はそう思っていたんですけどね(笑)。だけど、話を作っていてね、やっぱりさせられないんですよ。(中略)手もつなげない、肩も抱けない。それは、やはりもともとアニメの『To Heart』が持っている力だと思うし、並んで同じ方向を見ているだけで充分じゃないかと。僕は、ああいうところでキスするようなことを何回かやってきたので(笑)、ああ、またやるかと思ったんだけど、できない。8話で膝つきあわせて勉強する回がありましたよね。あそこで、例えば「手が触れました。それでドキドキしました」というのをやるのが普通のドラマなんです。普通はそうなんです。でも、そうはならない二人の関係というのが、あそこで確認できたんです。それはもちろんアクアプラスさんのあの二人のキャラクターに対する認識なんです。それでも、アクアプラスさんは最初、ラストシーンはキスしてもいいですよと言ってました。あるいは、あかりはあの時病み上がりだし、最後は浩之がおんぶして終わりにできないかと言われました。でも、僕はできませんと答えました。

>あの二人って、ある意味、夫婦なんですよ、もう。そういう風に描くしかなかった。8話を含めて、ドキドキする、ハラハラするようなヒロインにあかりをしてしまうと、他のキャラクターの話が作れないんですよ。そうすると他の女の子が登場するたびに、あかりはハラハラしなくちゃならなくなって、観ている人は、他のキャラクターに思い入れができなくなってしまう。それが、『To Heart』の制約ですね。普通の作劇はああはならない。