その2(こんにゃくのネタバレあるよ)

 エロゲで、5人ばかりいる各ヒロインらが運命共同体である必要は、実はあまりない。最後は個別に男とがっつりくっつくの前提だから、そこから逆算してシナリオを作れば他の子らと行動を共にするのは展開上のノイズだ。じゃあどうするかというと、「この青空に〜」なんかだと最初から「本筋」を断念する方向で話を作ってく。「寮での共同生活の話」なのに「楽しい寮生活」的なイベントは描かれない。オープニング、朝起きると隣に女の子が寝てました……それで? 同居女の子系のイベントはそれっきり。そうして本編で「寮生活でドキドキあんなことこんなこと」は何も描かれないにも関わらず、最後に寮から出て行くとき、みんなして泣いちゃうのである。彼らがどんな思い出をその場所に刻み込んだのか、具体的に観客の涙を喚起する類のエピソードは殆ど示されないまま。

 そこまで極端なことをやらないまでも、まぁ、達者なとこはどこもバランス感覚と経験で上と同じような綱渡りをこなしつつ作劇上の問題なんて何もないかのようにお話を作ってく。つか、この程度の問題は何を作るのでもどこかでついてまわるので、別にエロゲだけ不幸ってわけでも何でもなく、単に映画やマンガの特性ほど歴史も経験蓄積も理屈もないだけの話だが。

 で、上の本筋ナシでどう語るかの方法として「前半男の子がちょっと頑張る」「後半女の子が頑張る」「中間はバラけた個別エピソードでつないどく」とゆー手法。これで前半に男の子がイベントをこなして「日常」を獲得し、その日常を基盤に女の子が頑張り、後半の男の子は帰ってくる家庭とか居場所の役割に。「つよきす」はコレで、前後丸きり別エピソードをくっつけてる形になる。んで別の話でいいのかつったら、「あのヤらせてくれそうにない「ツン」ヒロインが「デレ」てヤれるところを見てみたい」とゆーエロゲならではの動機が機能し、関係ないはずの前後をつないでくれてる。てゆかヤれそうにないキャラ立てを十分に見せるためにも前半と後半はぶった切る必要があった。「物語性を記号化したツンデレ」を標榜してみせた話ならではの曲芸ではある。もちろん弟切草でも先まで読んで欲しかったらピンクのしおりを用意したのと同じことで、エロゲはどれもそーゆー要素で引っ張ってはいるのだが。