げんしけん

 諸事情により今回はじめて通し読みした。

 以前に1巻だけ読んだときと同じ感想だが、斑目先輩のような新入生を優しく受け入れてくれるオタクに出会っていれば俺の人生も変わっていたろうにと思わずいられない。もちろん夢と理想を描くユートピア漫画(ユートピアを裏返したディストピアを留保に入れつつ統合的にユートピアを描く漫画)なのだが、なるほど俺が中高生の時に読んでたら大学でオタクサークルに入りたいと願ったに違いない。

 それにしても、何で一時期これと『究極超人あ〜る』が対比されてたのかは理解できない。例えば、実際に大学時代某SF研に入ってきた後輩の台詞

「『おたくのビデオ』に憧れて大学のSF研に入ったが先輩方が全員薄くて全然ダメ」

に象徴されるように、おたくだかオタクだかの概念闘争を語るなら普通はガイナ系統だよなーと思う。件の彼はモチロン文句をがなりつつ4年だか5年だかずっと在籍し、オタク度で上下関係を構築することに専心してた。ちなみに「薄い先輩」にはモチロン僕も含まれる。どのぐらい薄いかというと岡田斗司夫と『おたくのビデオ』の関係を全く知らないままオタクアミーゴスに通ってたぐらい薄い。

 にしても斑目がとてもステキだ。僕が怪しい台詞の引用を実際に出来るようになったのは30近くになってからだが、20歳で「強敵よ」とか使いこなせてればどんなにか素晴らしい青春時代だったろうと思わずにいられない。僕はあとどれだけ薫さんたちにひっついて彼らの人脈に依存しながらステキワードを吐く環境に居続けられるだろう? 自分で人間関係を構築する努力を放棄してきた結果なのは承知の上だが、それでも、斑目の生に憧れずにいることは不可能だ。