召喚魔法と異界の越境と その4

 例えば、これはAVGになるが、『DESIRE』『EVE』シリーズあたりのマルチサイトシステムは、二つの異なる視点キャラクターを交互に操作していき、最終的には真相を知る別キャラクター視点の語りへとなだれこむ。これなどは一本道ではないが(一本道より遥かにかったるいが)、全体の情報を網羅していって最終的に一つの統合された結論に辿り着くわけで、構造的には一本道シナリオより遥かに「弁証法的」であると言えなくも無い。

 もちろん、ここで置き去りにされているものも多数あるわけで、ひとつには視点人物のゲーム開始時の目標が途中で消滅し別の目標にすり替わっている点である。つまり、ここにおいては、焦点はキャラクターではなく「真相」(犯人の動機)なので、視点人物の人格の統合性はどうでもいい。というより、当時のAVGに小説の一人称のような人格は見出せないと考えるべきで、システムサポートのボイスメッセージあたりに考えるのが妥当だ。システムのHELPはつまり神の声なので昔のゲームブックやAVGで二人称が使われてるのも(歴史的に追いかけたわけではないが)当然といえる。

 ちなみに、マルチサイトシステムそっくりの男女二人の主人公が交差するシナリオを取り扱った『 Remember11 』では、ノベルゲームとして一人称の人格の統合性を気にかけているため、「推理物」としての焦点となる「犯人」(つまり小説での主人公)については相当に考え込まれた配慮がなされているのだが、『 Ever17 』に群がった理系組には評判が良くない。まあ、シナリオライターの地の文がそもそも分裂気味なんじゃないかというツッコミはあるかもしれないが、『 Remember11 』では以前より随分と大人しくなってるので、その批判は(さほど……まあ多分)当たらないと考える。大人しすぎて物足りないぐらいだ。つまるところ僕は17より11のほうが好きだ。

 さておき、RPGである。積み重なる戦闘において焦点となるのは当然ながら戦闘能力、強さであり、レベルアップやそれに類する成長システムが導入されているRPGにおいては、全ての焦点は数値に収束する。能力パラメーター、ラストエリクサーの所持数、覚えたアビリティ総数、諸々の数値は目に見える形で表示される。焦点としての機能において、隠された数値と公開された数値では違う。RPGは公開された数値が焦点となる。

 続く。