グレッグ・イーガン「万物理論」創元SF文庫

TOEの中身がなんで十次元なのかとか核の部分の基本的な知識に欠けていて全然わかんないので楽しみようがありません、以上、で済ませたいんだけど、中身がわかんなくてもイメージだけはきっちりと描写してくれるイーガン先生の力量に力技でねじふせられてなんとなくTOEを巡る概念対決図が見えた気になる本作って実は「科学的」立場からすると最も厄介な無知カルトを形成しかねないんじゃないかと思いました。
あと、エピローグのところは東浩紀先生の評論を髣髴とさせるオチで、「モノフォニー」の意味がようやく実感的なイメージにまでまとまりましたとさ。
しかし大筋だけ見るとなんかもう、すげえ懐かしいんだけど。ホントにこの人現代の作家なのか? 実は1960年発表作品のリメイクとかいうオチがつかないだろうな?
 
追記。
イーガンの、思いついたネタを表返し裏返ししつこくしつこく羅列しまくる芸風って「かってに改蔵」が一番近い気がします。久米田康治画の「順列都市」が見たいなあ。