井上明人「ゲーミフィケーション <ゲーム>がビジネスを変える」NHK出版

まさかのビジネス書分類でのデビュー。なんでNHK・・・って、そういやMAGネットに出てましたね。

体裁としては、実践本じゃなくて「こういうことが起きている」という啓発本です。オバマの選挙戦略でミニゲーム的なモチベーション喚起がネット経由草の根選挙において非常に効果的に使われた、といった話を筆頭に、いろいろな「ビジネスの現場でゲームデザイン的な考え方が活用されてる」、かのような話。

ですが、著者の関心は、明らかに「ゲームじゃなかったものがゲームになる瞬間を捉える」であるとか「ゲームがゲームとして成立するシチュエーションの境目を見極める」でありまして、後書きで語られているように、とても判りづらいし捉えにくい「ゲームとは何か」とゆー思索的な内容が中心にあります。(てゆか改めて見たら帯に「<ゲーム>とは何か?」と書いてますね)
まあ実際、そういう視点を持っていないと、いろいろ余計な揚げ足取りに引っかかる話だと思います。おそらく、ここであたしがどんだけ紹介したところで、「ビジネスの現場でのゲーム活用って、要は売上ノルマ競争だろ」などと、本書で再三再四、様々な語り口で注意深く否定されてる考え方を粗雑に採用してあっさりと一刀両断し、無視する人のほうが多数だろうというぐらい、デリケートな内容です。デリケートな話を、様々な実例の積み上げによって、なんとか導き出そうとしています。偉い。

あたしらは逆に、ビジュアルノベルというジャンルにおいて、「ゲームであったものがゲームじゃなくなっていくこと」「もはや明らかにゲームではないようなものがゲームとして扱われ続けること」、つまり、「ゲームじゃないとはなにか」のほうが話の中心でした。ので、ここに書いてるようなことについては、成る程なあ、と面白く読みました。