世界樹の迷宮におけるエロゲー論壇の位置づけ

 来週ようやく3作目が出る世界樹の迷宮だが、この古典的なダンジョンRPGではキャラクターとプレイヤーの関係は、やや特殊な位置づけでもって関係付けられている。プレイヤーはまずキャラクターではなく、キャラクターが所属するギルド(冒険者仲間としての、集団)に、名前を付ける。

 本作では町の住民や他の冒険者から各キャラクターの名前を呼ばれることはない。かわりにギルドの名前でもって親しげに話しかけられる。つまり、我が家のDSに刺さっていた世界樹2データであれば、「やあ、エロゲーろんだんの皆さん、いらっしゃい」であるとか、「エロゲーろんだんにしか頼めない依頼だ」などと言われる。ロリ美少女に「エロゲーろんだんの皆さんは、冒険が終わったらこの町を去っていってしまうんでしょう? そんなの嫌です。ずっとエロゲーろんだんの皆さんに居て欲しい」などと言われてしまう。個人のキャラクター名であれば愛の告白だが、しかしそれはギルド・エロゲーろんだんに所属する全員への言葉である。解釈次第では、ちょっと脳が捩れるシチュエーションだ。

 一方で、世界樹の迷宮の公式サイトを見れば判る通り、各キャラクターは登録時に各々の名前をつける。さらには、パッケージイラストに描かれているような、可愛らしい個別キャラクターの外見を、登録時に選択するようになっている。(ロリガンナーいまき…は居ないです。残念)

 つまり、プレイヤーの視線からは、キャラクターは各々の個が見出され、ゲーム内で他者としての役割を受け持つNPCからは、ギルドという集団が個として振舞うかのように見出される。Lv.1で登録したばかりの新人一人で街中を出歩いていても、NPCにとってはベテラン冒険者集団のエロゲーろんだんである。

 のみならず、2作目では、各職業ごとの個別イベントが用意されることで、パーティー内の個人がシナリオとしてもクローズアップされ、状況がさらに複雑になっていく。ペット一匹(狼やパンダの外見だ)でパーティーを組んだ上でペット必須イベントを受けると、酒場の店主は、そのペットをエロゲーろんだんときちんと区別して認識した上で、他のキャラクターが一人もいないのに、「お前らは、ここで待っていろ」と声をかけてくる。店主は、いったい誰に話しかけているのだろうか。エロゲーろんだんとは、ギルド名といいつつ、実は、冒険を行なおうという意思そのものの具現化として、キャラクターを突き抜けてプレイヤーを指し示しているのではないか。そんなふうにすら思われる。