バクマン5巻

 実際に連載をはじめちゃったらもう順位(そしてアニメ化)をすごく前面に出してきた(それしか書きようがない)のがおもろい。これが「少年マンガフォーマットにおとしこまれたまんが道」で、つまり「少年漫画の主人公とは」という、もう、いいかげん、テンプレにしても少し考えてタイトルつけろ的なマンガ評論ブログ記事に対する「ジャンプの漫画としての一つの回答」として提示して、それなりの正解になってる。

「少年漫画の主人公とは、漫画を描くにあたって順位を気にしてアニメ化を目指して、んで売れて一生を漫画の収入だけで食ってく(結婚関連の費用も含む)のを目標にする」。素敵。

 ある種の醒めた人物観察で突き放して描かれる編集部の人やアシや他の作家の「個性や価値観」の置き方が、ものごっつ誤解ウェルカムで言えば「人それぞれのパーソナリティ・人生のあり方・人としてどう生きるか・もっといえば自我のありどころなんて、漫画においては飾りっすよ、飾り」と主張してしまってるのがよい。作家性、個々の人物の人物史に目を向けるのは、結局のところ、見る人が社会的に「負け組」だからそっちに目がいくのだ、とゆーことか。別に勝ち負けなぞどーでもいいが、少年漫画の主人公における「努力友情勝利」の勝利てのは、つまり非人間性・没個性・人が人の形をしてるけど心理や感情や内面なんぞ持ってねえ、ていうスッピンぶりとワンセットというか、誰もが被れる「仮面」だからスッカラカンじゃないと困るのが、しっかり確認されてるのがよいなあ、と。小説の主人公にしたって、誰もが被れる仮面を目指して特殊な生き方してるヤツの特殊ぶりを暴いて中身をスッカラカンにするのがセオリーな気がするのだが、まぁ、小説読んでる本数は少ないので、あるいはそれが当り前じゃないのかもしれない。

 あー、この場合の「勝利」がいわゆる「テーマ」なんだね。バクマンのテーマはジャンプでアンケート1位になってアニメ化してヒロイン役の美少女声優と結婚して人気漫画家として生きてくこと。なごむわあ。