新本格魔法少女りすか

 を、イングリッシュパブみたいなとこで読んでたら、
「なに読んでるの〜」
 と、となりのカップルに声をかけられて、タイトルを見せたら
「私、魔法って名前がついてる本って子供の頃にスレイヤーズっていうのを読んだっきりだよ」
 と言われた。
 んで、
「なんかさあ、妙にリアルだったり塩っ辛かったりするんだよね、女の子は生理の間だと魔法をつかえなかったりして」
 というコメント。

 あと、
アキハバラ行きますか? 上司が最近涼宮ハルヒにはまったバブル期就職組のオタクなんで、よく秋葉原まで連れて行かれるんですよ」
 という話をきいた。

 僕はひたすらしらばっくれた。

 ああ、やっぱ俺ってオタクですオーラ発してるんだな、と思った。

 他者との出会いは遠い。

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 2話目が名前の数で強さを数えて。
 3話目が確率が物理的距離により上がったり下がったり。

 よくできた話だ。

 どんだけ的外れであっても、とりあえず意思表明はするんだ、というのが青春なのだな。プリズマとの違いか。

>「…そういうことは、あそこで寝ている人間に訊いてくれ」
 俺は親指で背後を示す。すると澄香は、その手を掴んで引き寄せる。
「…まさか先輩達って、お互いのことが大嫌い、なんて…」
 俺達は少なくとも、互いの心象を云々する立場にはない。それだけの経緯が無いからだ。
 蓄積された過去。ザマニ。基盤となる、その拠り所が無ければ、現在であるササは、存在すら揺らぐ。
「そんなこと…ないですよね?」
 だが、過去は重荷だ。頑強な後ろ盾は、身を守ると同時に、自身の動きを鈍くする。
 アイデンティティが堅固になるほど、自由度は失われ、果てに、四肢は鉄釘で打ち付けられる。
「あ…そっか、実は先輩達って… 恥ずかしがり屋さんなんですね? だから、気の無い振りなんかして…やだなぁ」
 現在に連なる過去は、未来への方向性を、意志とは無縁に決定する。
 経験は自己の在り方を定め、将来における多様性を否定し、慣例から逸脱した対応を放棄させる。
「でも…恥ずかしいのって、結構ドキドキだったり… それも、らぶらぶなドキドキと似てたりして…うん! そういうことなら、私も納得です!」
 勿論、これは詭弁だ。しかし俺が、その硬直を怖れているのは確かなのだ。だから俺は今もまた、何も答えずにいる。だが…柊は?