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――ねえ、覚えている?
出会った時のこと。
桜を見上げる貴方。
お化けでも見るような目をした貴方。
何かに、怯えていた貴方…
薄紅を、深紅と言い切る貴方。
桜の木々の向こうに、どこか別の世界を覗いていた貴方。
放っておいたら、その先に消えてしまいそうな貴方。
どうしてかしら、声をかけたのは。
どうしてかしら、笑いかけたのは。
私と同じ、のっぺらぼうの貴方に。
どうして?――
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――好きだから。
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「ぁ…ぇぇ?」
言葉に詰まった。
「ん?」
単なる、読み間違えだったのか。
それとも無意識だったのか。
――好きだから。
そんな台詞は、ない。
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少女は、なぜ同じのっぺらぼうの男子に声をかけたのか、笑いかけたのか。
なぜ、そうやって、どこかに消えてしまいそうな彼を、繋ぎ止めたのか。