宿題・椎名繭

 EDまで通して読んだのは今回が初めて。書かされてるシナリオ、といったところ。繭と繭の母のツーショットがMOON.のそれに酷似して見えるのは麻枝准が繭シナリオを掴み損ねてるからと言っていい。

 ONEは大雑把に言って長森シナリオがメインで、そこから枝分かれして各ヒロインのシナリオが出来上がってる。久弥担当分なんかはそのへんアカラサマで「永遠の世界」ていうメインコンセプトを3通りの方法で解体することで各シナリオが構成されてて、これは「麻枝准のコンセプトを理解していない」というより、元々が長森と七瀬のことしか考えてない殆ど一本道のメインシナリオからどうやって分岐させるかを考えていった結果、メインコンセプトを一旦解体して少しづつずらしていくしか方法がなかったんだと思う。
 当時、一つのテーマを保持しつつ継ぎ目なく6本に枝分かれしていくストーリーなんて方法論は存在しなかった。まあ今でも知る限りトノイケダイスケぐらいしか方法論持ちえてないっぽいが。久弥担当は茜では「永遠のセカイへ行く」ていうストーリーを、先輩では「学校というゲーム舞台」ていう閉じたセカイ=永遠のセカイを、澪では永遠の盟約の少女を、それぞれ題材にしてシナリオを作った。

 一方の繭は明らかに男女入れ替えがコンセプトで、「子供のままでいようと永遠を求めた少年」に対して「子供のままでいようとする少女」を、つまり主人公の影を造型してる。ところが永遠のセカイの「ぼく」と「少女」は元々キッチリ分かれておらず、浩平の「影」は永遠の少女のことでもある。それは妹や長森でもあるし浩平が絆を投影した少女たちそれぞれ全てでもある。そうなるとコンセプト的に一番近いのは澪だが、澪は言葉を持たないことで対話トラップから逃れ他者(対等の相手)たりえている。繭も思い切って「みゅー」しか言わないキャラにすべきだったと後知恵では思うけど、実際には単なる子供として描かれる。んで繭の成長というのが曲者で、浩平の想定範囲内でしかなくいわば反乱しないマイフェアレディ。エピローグの日記はゲーム内の日付と対応してると思われるけど、繭のやってるのは浩平のゲーム内の生活の丸コピーで、文中では美少女ゲームである本編で入れられない根性努力成長の要素を投入してみせるものの全てプレイヤーの視野外であり浩平が何をやってるわけでもない。つまり汚れてない。

続く。