谷川流「涼宮ハルヒの〜」×7冊 角川スニーカー文庫

まとめ読みしてた。正確には、「憂鬱」「溜息」は出た頃に読んでて、「退屈」以降を溜め込んでたのを一気に読んだ。
油断してた。
以前やまうちさんが『悪魔のミカタ』1巻によせて、ライトノベル作家ってのは人気が出たら後に続けることができるような設定と話作りをきちんと先にやっとくのも才能なのだよ、と僕に向かって教え諭してくれたもので、それ以来僕はライトノベルというのは「続く」という属性を帯びたジャンルなのだと理解している。デビュー第1作からどころか新人賞応募の時点から、作者も読者も作品も「続く」という枠組みによって語られなければならないし、人気がないなどのちょっとした諸事情で続きが出なくなるという側面も作品を構成する大きな要素なわけで、ライトノベルなるものがもしも当世のなにがしかを反映しているとしたら、それは「続く」という属性のもたらすものに他ならないんだろうとか、そういうようなことを思いながら読んでたら切なさ炸裂して大変なことに。

  • 「退屈」

切ない。30過ぎて読むもんじゃないわけだけども、上記のようなことを思いながら読むと洒落になってない。てゆか「憂鬱」はヌルい、「溜息」はキツイという程度の感想しか持てないのだけど、ここにきて転叫院さんのいうシビアさなるものをようやく理解した。僕の理解が遅くてスイッチ入るのが1回転ばかし遅れてるのはいつものことではあるが、それにしたっていくらなんでも「DALさんが読むべきはこっち.」って何てヤバイ物を。

《「君はスローン・スクエアの次はどうしてもヴィクトリアだというけれど、僕は反対に、その次にはどんなことが起こるかわからなくて、ほんとうにヴィクトリア駅に着いたときは九死に一生を得た気がする。だから車掌が、ヴィクトリア、と叫ぶのは無意味なことではないので、それは僕にとっては勝どきなんだ。ほんとうにヴィクトリア、つまり人間の勝利(ヴィクトリー)なんだ」》(チェスタトン『木曜の男』、吉田健一訳)
http://imaki.hp.infoseek.co.jp/200407.html#26bから二重引用

「続く」てのはもちろん例の「日常」ってやつの言い換えで。未来人や宇宙人や超能力者がいる光景てのは非日常だけれど、部室に住まわされた(囲い込まれた)未来人や宇宙人や超能力者は日常の延長で、そこでは例えばキスシーンのほうがよほど非日常だったりするけど、そんな非日常のキスシーンが本当に非日常扱いされてしまってそのまま日常が続いてしまうってのは1作目で終わってしまうなら日常のフリした非日常程度のことでしかないのだし社会人になってしまえばそんなんはそれこそ日常なのだけれども、それが2巻目以降も続いてしまうどころか、新人賞受賞の1巻目だと思っていたものが実はそれより先に続編が雑誌で発表されていることで最初からそれが続いてしまっていたなんてのは悲劇とか恐怖とか絶望とか戯言とか適当なこと言って自分の神経を誤魔化さないと耐えられないだろ、と思うのだけど。よくこんな恐ろしいものをみんな普通に読めますね。

  • 「消失」

これ『僕と、僕らの夏』だろとか思って検索したら。
http://imaki.hp.infoseek.co.jp/200408.html#11a
順序は逆だが連想するのは同じだよねやっぱし。
キョンが。1巻2巻のキョンはどうでもいいのだけど(一生乳繰り合ってろ)、「笹の葉ラプソディ」がこういうところに来ちまうんか、つーかあんた3年前の記憶ってえいえんに片足突っ込んでますか、じゃない、あんたえいえんのセカイに佇む女の子ですか。ハルヒに「今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ」とか言われて取り残されるキョンを幻視しました。つーか俺のことだそれは。
あと

また「ぼく」は、狐面の男を射殺するという決定的な行動に踏み出すことなく、
http://www.so-net.ne.jp/e-novels/hyoron/genkai/001.html

引き金を引くことすら許されないのか、てオーバーヒート。

  • 「暴走」

「消失」の終わらせ方のせいでこっちが暴走状態だったのでキョンが何か言うたびに過剰反応してました。特に「雪山症候群」なんか3年前がどうこう言うたびに「永遠」の二文字がチラついて洒落になってねーつーか。こーゆー精神状態ってしばらくぶりだったわ。

  • 「動揺」

前の巻に引き続きこっちが動揺しっぱなし。キョンの行方以外目に入らない状態が最後まで続いてしまったので、ほとんど読めてないというか。

キョンハルヒに愛されてると思い上がってまあみくるや有希とのうあきに精を出し、
http://www1.cds.ne.jp/~tp/books/readone.cgi?tnum=217

長門に声をかけるたびに永遠がー永遠がーとブツブツブツブツ。

  • 「陰謀」

冒頭の例のシーンで完全に思考停止した。そんで気がついたらクライマックス。横っ面張り倒されました。日常がこんなにも大切なものだったなんて、とか素で思いました。ハルヒがあらためて大好きになりました。キョンより僕のほうが永遠行き決定っぽいですね。