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立ち絵芝居という二次元空間

えっと。よろしければこちらのコメントやid:hiyokoya:20050405#cのコメントもどうぞ。そうです私がともよです。似たような話をもう少し別の言い方しています。それで、

で、幕間劇からきてるからだ、っていうのは、一瞬すごく納得したんですが、ハタと、それって歴史的に正しくない気がすると思いました。

につきましては、id:tdaidouji:20050413の文章は「ぼくらがここにいるふしぎ。」というタイトルの特定エロゲーのシナリオについての記述でして、全てのエロゲーシナリオがそうだと言っているわけではありません。むしろ荒川工は特殊であるという文意です。もしも「ぼくらがここにいるふしぎ」が「ああ俺なんでエロゲーのレビュー文章をはてなダイアリーに書くようなやさぐれた場所に来てしまったんだろう」というストレートな意味だけだと思われたならごめんなさい。って自分で自分の文章の説明をチマチマやってるとまるで荒川シナリオのヘタレ主人公みたいだよ? やりぃ。
 
さて、エロゲの立ち絵を巡ってはid:izumino:20040229#p4における「ウィザードリィはギャルゲー」発言が一つの卓見であるかと思います。すなわち、画面内のヒロインの立ち絵はPCと正対するモンスターグラフィックと同じなのです!
「あゆあゆの こうげき!」
「あゆあゆは ボクのことわすれてください を となえた!」
「ゆういちは 65535ポイントの ダメージを うけた!」
「ゆういちは たおれた」
こんな感じで(倒れてどうするよ)
えーもちろんそれだけじゃなく。「Critique of games」のコメントでわたくし少し触れてますけど、ノベルゲーのシナリオはいくつかの別の出自のテキストが混同されたり意図的に合成されたりしながら出来上がったものです。例えばAVGの「話す」コマンドを押すことによって交わされる会話は剣を振って得られるモンスターへのダメージ数値の表記と等質であり、それによって得られた情報はモンスターを倒し宝箱を開けて得られるアイテムやゴールドと同じレベルの「獲得物」とみなせます。一方で同じAVGでも物語の導入部や場面移動のつなぎなどで挿入される会話は「ゲームそのもの」ではなくゲームの舞台設定の説明などを兼ねており、「物語」としての性格を持っています。*1同じ「会話」でも位相が異なる。
同様に、立ち絵と顔ウィンドウ*2でも出自が別ですし、扱われ方も異なります。「ぼくらがここにいるふしぎ。」では顔ウィンドウしかなく、立ち絵は採用されていません。そうした演出上の差異はシナリオの内容と密接につながっています。
例えば、ぱれっとの立ち絵はシナリオによって扱いが異なり、それだけで印象が随分と異なるようです。「はちみつ荘deほっぺにチュウ」のしずかちゃんの背中は表情のバリエーションとして効果的に扱われていましたが、「復讐の女神」では純粋に位置関係の描写のためだけに横向きや後ろ向きの絵を使用し、効果は発揮されませんでした。「汚れた音色」は体験版しかプレイしておりませんが、ヒロインの一人称のモノローグと彼女自身の背中立ち絵が組み合わされたとき、「陵辱されようとしている自分をどこか切り離された意識で見つめている自分」が感じ取られ、正直ええ感じでした。アイドル陵辱やっほう。…ってのは置いといて、シナリオや全体の演出によって立ち絵の使い方はどうとでもなると思います。
背景と立ち絵という分離の仕方にしても特殊なものです。挙げているライアーソフトの「腐り姫」では画面のそれは「背景」というより風景画的で、その風景画の中にモノクロの人物が描画されます。またクローズアップされるバストカットの人物画アップは立ち絵というより顔ウィンドウの拡大されたものと言えるでしょう。つまり「腐り姫」では立ち絵と背景という形ではなく、絵と絵の中の人物という形で、人物が背景の中に塗り込められている。そうした描写が舞台世界の淀んだ空気と時間経過のない繰り返す四日間というシナリオに密接に連結しているし、また一方で、画面から切り離されたバストカットが行き場所をなくして人物がSF展開に弾き飛ばされたという見方もできます。
話を戻しますと、立ち絵はゲーム内部の文法であり、顔ウィンドウはゲームの表層、物語の文法であると、ものすごく大雑把に言ってしまえると思います。

*1:「幕間劇」はこの延長です

*2:メッセージウィンドウの横によく表示される